2017年2月10日金曜日

あやかしごはん~おおもりっ!/木邑浅葱

石田彰さん演じる木邑浅葱の感想です。


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ループする時の中、
何度も何度も君を見て来た。
だからこれからも
ずっと君を見て居たかった。
でも、もう限界みたいだ。

君と出会えて幸せだったよ。
だから今度は君の番だ。
幸せになるんだよ。

………たとえその未来に
僕が居なかったとしても。

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8月20日。
母を亡くし
一人ぼっちになってしまった主人公の元に、
吟さんがやって来た。
あの村で一緒に暮らさないか?と。

そうして8月31日から
お世話になる事になった彼女。

吟さんが彼女の元へ来たあの日、
紅葉村では土砂災害が起き、
彼が村に辿り着いた時、
村の様子は変わり果てていた。

大切な人たちは
みんな土砂に飲み込まれて亡くなり、
生き残ったのは、村を離れていた吟さん、
神様、そして12人のあやかしたち。

最愛の息子を土砂で亡くした吟さんをはじめ、
あやかしたちはみんなこの村が大好きだった。
人とあやかしとが共存する
優しく温かい紅葉村が。

そうして吟さんの悲しい願いに、
村を愛する12人のあやかしも賛同して、
みんなの妖力と、
1000年も村を見守り続けた
桜の木の記憶を使い、
虚構の村を創りだしたのです。

1000年もの記憶を持つ桜。
それがあの狂い咲いた桜の正体。

その虚構の紅葉村では、
吟さん達を除いた他の村人もあやかしも、
みんな既に亡くなっている者ばかり。
普通に起きてご飯を食べて
学校に通っていても、
本当の未来に、彼らは存在していない。

そうしてその村では、
おかしな時間のループが始まった。
吟さんの望みは息子の成長。
綴くんの誕生日は3月10日。

そのせいでなのだろうか?
8月20から3月9日を
延々とループする村の時間。
ただ変わることなく、それが続いている中に、
彼女だけが唯一外からのお客だった。

あの村は桜の記憶からできているから、
桜に記憶のない一人の少女の存在は
大きな負荷を与える事に。
ただ延々と続くループが、
予想より早く限界を迎えてしまった。

彼女が何度も何度も繰り返す時間の中で、
様々な人やあやかしを
その優しい心で救ううちに、
桜は散り始め、少しずつ枯れ始めた。

元々神様が永遠に続けては、
吟さんたちの妖力がもたず、
彼らが命を削る事になるから
…と制限をかけていたものの、
外部からのお客である彼女の存在が、
その制限に到達する時間を
予想以上に早めてしまった。

それと同時に、
このループする時を管理するために生まれた、
桜のあやかしの浅葱くんや神様が、
何度も繰り返す時の中で、解決策を探していた。
その解決に必要なものを持ってきたのもまた、
他でもない彼女だった。

それは昔、まだ本当の時間が流れていた紅葉村に、
幼い彼女が訪れたあの夏の日。
宝物のくまの目が壊れてしまった彼女を見かねて、
吟さんが大事にしていた石を
目の代わりにしてくれた。
その石は1000年前に陰陽師だった真夏さんから、
1000年前の吟さんがもらった石。

長い年月を経て、
元々力のあるその石には、
沢山の力がためられ、
それを謡と詠、
二人の狛犬の失われた目にしよう…と。

それが彼の見つけた解決策。

狛犬には守護の力があるから、
二人が完全体であれば、
土砂災害は事前に察知され、
避ける事が出来たのに。
信仰の薄れた人間達により、壊された片目、
そのせいで力を削がれた双子には、
土砂災害を知る事が出来なかった。

だから枯れかけた桜と、
尽きようとしている夢の世界、
その為に力を失いつつある浅葱くんだったが、
彼女を過去に飛ばす事で、
土砂災害の前に双子の失われた目に、
くまの目になっている石を
嵌めて欲しい…と頼んだ。

そうする事で、
記憶は全てリセットされてしまうけれど、
新しい未来が開けるから…と。
力のある石が彼らの目となり、土砂災害を免れ、
そうして君の一番望む未来にたどり着けるよ
…と。

吟さん、12人のあやかし、神様、
そして浅葱くんから使命を託された彼女は、
彼らの力で過去へと飛んで、
双子の狛犬に石を託し再びあの紅葉村へ。

時を飛ぶ真っ白な空間。
そこには彼と彼女の二人きり。

君に出会えてしあわせだったよ。
多分僕は
君に恋をしていたんだと思う。


…と言うのです。

そうして自分はループする時の管理者だから、
あの災害の起こっていない未来には
本来存在しないから、
だから君の未来にいない…と。

そう告げる彼は、
消える事などとおにわかっていたのに、
いざその時が来ると、
名残惜しく思ってしまう。

だってずっと見て来たから。
何度も何度も繰り返す時間の中で、
どの時間も彼女は精一杯全力で生きてきたから。
その強さが眩しくて、
彼はそこに惹かれていたから。

だからもっともっと、
彼女を見守っていたかった。
災害のない未来で、
彼女がどんな風に笑うのかを。
そうして生まれてからの時間は短い彼ですが、
彼女からもらった
沢山のしあわせをその胸に抱え、
紅葉村を救うため、一人消えて行った。

だからどうか、
彼女が辿り着いた平和な未来のその先に、
違う形で生まれて来た彼と、
もう一度どこかで巡りあえますように…。

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ねぇ、今度生まれてくるときは、
また君に出会いたいよ。
だから、その時まで、またね…。