2017年2月7日火曜日

あやかしごはん~おおもりっ!/芹ヶ野真夏

興津和幸さん演じる芹ヶ野真夏の感想です。


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俺たちは結ばれてはいけない
運命なんだ。

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時を遡ること千年、平安の世。
そんな昔に出会っていた
彼と彼女。

陰陽師の藤原真夏、
それがその当時の彼。
悲しい運命の始まりの出会い。

彼に引き取られ、
大事に育てられた姫は、
都でも評判の姫に。
そうしてそんな噂を聞きつけた帝が、
彼女を側室に迎えたいと言い出した。

陰陽師として帝に使える彼にとって
帝の言葉は絶対だった。
どんなに大事な姫でも、
彼女を帝の元に嫁がせなければならない。

彼女も帝の命が絶対と知りつつも、
顔も知らない人のところに嫁いで
真夏さまと離れたくない…と、
泣いて頼んだ。

何もかも捨てて、
逃げればよかったのかも知れない。
そうすれば運命は
変わっていたかも知れない。

何度も繰り返した転生の中、
彼は幾度も後悔した。

けれど、その時は
守るべき家や家来たちも居る、
立場のある彼は、
そんな行動に出られる訳もなく、
姫もまた、頭ではそれを理解していたので、
互いが互いを想い合いながらも、
永久の別れとなった二人。

そこで終わるハズだったのに…。

帝の寵愛を一身に受ける姫を
妬ましく思った者により、
姫は呪いを掛けられてしまった。
そうして病に倒れた彼女は、
再び藤原の屋敷に戻って来た。

そうして二度と
会う事が叶わないと思っていた二人が、
悲しい形で再会を果たしてしまう。

呪いが原因だと分かりながらも、
彼の陰陽師としての技術も知識も、
その呪いを解く事が叶わないまま、
次第に弱りゆく彼女。

そうして残された時間を
以前のように寄り添い合い共に過ごす二人。

僅かな時間は瞬く間に過ぎ、
姫は彼を残して旅立って行った。

そうして彼を襲う一度目の後悔。

何もかも捨てて、
逃げればよかったのかも知れない…と。
だって、そうしていたら
姫は呪われる事などなかったから。

けれど、自分にそんな勇気がなかったから。
そのせいで愛する姫は呪われて、
その命を奪われてしまった。

その後悔の念に耐え切れなくなった彼は、
姫の居ない世界で
生きる意味を見出す事が出来ないまま、
後悔の想いと共に、入水自殺を。

そんな彼の自分自身を呪う気持ちが、
長い時を経て獏というあやかしに。

その後、何度も転生を繰り返し巡りあう二人。
けれど、いつの時代も
二人が結ばれる事はなかった。

出会い、心がひかれあうと、
彼女が死んでしまう。
だからいつしか思うようになった。
近づいてはいけない。
想い合ってはいけない。
好きだけど、好きだから、遠くから見守ろう。

そうして彼は、
幾度も繰り返された悲しい運命の中、
孤独と戦い生き続けた。

悲しい運命には終わりなどないかのように、
再び巡りあってしまう二人。
そうしてまた互いが惹かれ合った時、
彼女は深い眠りに就く。

眠る夢の中、獏に出会った彼女は、
繰り返された幾つもの悲しい別れを
獏により見せられた。

あぁ、そうだったのか?
真夏さんに会った時に感じた、
一緒に居る時に感じたあの懐かしい気持ち、
それはこういう事だったのか。

そう納得した彼女は、
自然と理解してしまった。
このまま目覚める事なく、
自分は死んでしまうのだろう…と。

そうして最後に見せられた始まりの時。
始まりのあの出会いと、悲しい別れ。
その後の彼の自殺。

見せられたその中に、彼の孤独を感じ、

守られるだけなんて嫌、
今度は私が彼を救いたい!


と強く願う彼女。

そんな彼女に、
千年前の彼女が力を貸してくれた。

彼が悔いていた出会いを
彼女は悔いてなどいなかった。
死んでしまったけれど、
たった一度くちづけを交わしただけで、
離れ離れになったけれど、
それでもしあわせだったから。
出会えて良かったと思っていたから。
彼と過ごした暖かく穏やかな時間は、
彼女にとって、しあわせな時だったから。

そうして千年前の自分の力を借り、
獏の夢の呪縛から解き放たれた彼女は、
今度は彼を守るために、
あの紅葉山の桜の元に。

すると、そこには獏と対峙する彼が。

そうして彼女は気付いた。
獏はただのあやかしではない。
彼の後悔が生み出した孤独の塊だと。

だから彼に襲いかかる獏を抱きしめた。

ずっと辛かったよね、寂しかったよね。
でも、もう大丈夫だよ。


…と。

すると、獏は千年前の藤原真夏の姿に。

全ては自分の作り出した呪いだったんだ。

気づいた彼は、
ついに悲しい運命に打ち勝つことが出来た。

そうして晴れて恋人になった二人。
迎えた春、3月9日。
二人であの桜を見に出かけた時の事。
いつも満開の桜が、
一段と美しく咲き誇っている事を感じた時、
彼女は、ふと言い知れぬ不安に襲われた。
隣で手を繋いでいる、
確かにここいる彼をを失うような不安。

その気持にせかされるように隣を見ると、
さっきまで一緒だった、
手を握ってくれていた彼が、
姿を消していた。

「真夏さん!」
愛おしい人を求める彼女の声だけが、
春の山に響き渡ったのでした。