2017年2月9日木曜日

あやかしごはん~おおもりっ!/伊吹萩之介

水島大宙さん演じる伊吹萩之介の感想です。


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一人で食事をする事が多かったから、
人がいると食事が出来ないんだ。

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そう話す彼は、小さいころにお母さんと、
そのお腹の妹を亡くした。

それはまだ彼が小さかった頃、
大きなお腹のお母さんと
神主の父、そして祖母。
家族仲良くしあわせに暮らしていた。

所がある日、母の定期検診の日、
父が運転する車が事故に巻き込まれて、
父は意識不明、
母は命を落としてしまった。

それだけなら
ただの事故死で済んだのですが、
その後、とても不思議な事が起こった。

当時の彼は何も知らなかったが、
亡くなったお母さんに
ミネというあやかしが憑依してしまい、
ミネは亡くなったはずのその体を、
自分が棲まう森の奥まで連れて来た。
その体に憑依したまま。

憑依した時に彼の母の感情が入り込み、
お腹の子供や家族の事ばかりを
気にいしてるその心に触れ、
どうしてもお腹の子供を
助けてやりたくなったから。

そう、とても優しいあやかしだった。

そうして森の他のあやかしの力を借り、
死んでいるはずのその体を2ヶ月保ち、
森の奥で、彼の誕生日と同じ2月1日、
予定日通りに女の子を出産。

子供を産んだミネは、
長期間の憑依と出産で力尽き、
その赤ん坊の名前が桜だという事を告げ、
亡くなった。

その出産に立ち会った鵺が、
子供を哀れに思い、
村の古本屋の店主が
あやかしを見る目がある…という噂を頼りに、
彼のもとに赤ん坊を連れていき預ける事に。

そうして鵺から教えられた
桜と名付けられた女の子は、
立派に成長した。

一方、そんな事など知らない
ニンゲンの世界では、
亡くなったはずの彼の母の遺体が消えたのは、
あやかしの仕業じゃないか?とか、
母がそもそもあやかしだったんじゃないか?
そんな噂が飛び交う中、
空の棺で葬儀が行われた。

父は目を覚まさず、家には祖母と二人きり。
けれど、お腹の孫も息子の嫁も亡くし、
息子は意識不明で
いつ目覚めるとも知れない状態に、
祖母は気を落とし、部屋に閉じこもり、
あまり食事も摂らなくなってしまった。

少し前までは
家族で食卓を楽しく囲んでいたのに。
今ではそれが嘘のように、
ひとりきりの食卓で食事をする彼。

辛くて寂しくて。
いなくなった母の死を
まだ理解も出来ていない彼は、
毎日母の帰りを待っていた。
たったひとりで。

それでも母が戻らないので、
とうとう2月1日、妹が生まれる予定日の日、
帰れず困っているかもしれない!…と、
幼い足で、母を探しに出かけた彼。

村中を探しまわった彼は、
気づいたら森の中に。

次第に日が暮れて、寒さも増してきて、
緊急の食事にと持ってきた
ビスケットも食べつくし、
お腹も減って心細くなった彼。
それでも見つからないお母さん。

辛くて怖くて寂しくて、
彼は「お母さん!」と
泣き出してしまった。

丁度その頃、出産を終えたミネは、
その声が憑依している体の主の息子だと知り、
最後の力を振り絞り、息子のもとに。

何も知らない彼は、
そのまま森の中で眠ってしまい、
目覚めると、森の入口に居て、
傍には母の亡骸があった。
そうしてお腹の中からは、
赤ん坊が消えていた…と言う事件に。

だから彼はあやかしに会いたかった。
母のその事件の真相が知りたかったから。
母のお腹から消えた妹が
どうしてるのか知りたかったから。

それに、森で眠ってしまったその時、
彼は夢を見ていたから。
それはとてもしあわせな夢で、
あの事故がなかったら、
伊吹家に普通にあっただろう未来の夢。

病院で無事に出産した母の元に
父と祖母と駆けつけると、
可愛い赤ちゃんが居て、
名前は桜というのよ…と、
嬉しそうに教えてくれた母の夢。

だから彼はどこかに妹が居るのでは?と、
ずっと気になっていた。

そんな彼の探し求めていた真実を
見つけてくれたのが、転校生の主人公。

本が好きな彼女が、
クラスメイトの紹介で訪れた古本屋、
そこで彼にとても良く似た
「桜」という名前の女の子と出会った彼女。
その子はその店主のお孫さんだった。
既に彼から不思議な体験を聞いていた彼女は、
妹の名前の夢の話も知っていて。
だから気にってしまい、
何度も何度も古本屋に通い、
桜ちゃんの事を店主に訊ねてみるのですが、
話すことはないと、追い返される毎日。

それでも根気強く通い続けた事で、
やっと真実に辿り着いた。

その後、妹は
育ててくれたおじいさんが心配だから…と、
そのまま古本屋さんで暮らしてはいるものの、
時折おじいさんも含めて、
家族で食事をしたりする間柄に。

彼の事を伊吹さん
…なんて他人行儀に呼んでいたのも、
今ではお兄ちゃんと呼ぶように。

いつか家族で食卓を囲むのが
夢という彼でしたが、
思いがけない形で、それが実現した。

その後、彼女と正式に恋人になった彼は、
自分はあやかしが見えないものの、
彼女が見える世界を共有したいと、
見えないあやかしと
彼女が挨拶を交わしていると、
真似て声をかけてみたりと、
見えないながらも交流を深めてる。

そんな風に見えないながらも
妹を助けてくれたあやかしと、
少しずつその世界を近づけて
暮らしていく事でしょう。
彼女と二人で。