2017年3月2日木曜日

悠久のティアブレイド/シュド

石川界人さん演じるシュドの感想です。


-----☆★☆-----


今、やっとわかった。
どうしてギル団長でもなく、
アイナ主任でもなく、
オレがここにいるのかが。

きっとオレは君に返しに来たんだ。
昔のオレが、姫様から貰ったものを。

-----

3000年程昔の事。
古代文明では、
発達しすぎた技術が産んだ悲劇から、
自然のままに生きようという
考えが強くなった。

人類の黄金時代とも言われる時代で、
転換炉を使用し、
膨大なエネルギーを得ていたものの、
その悲劇「ナノマシン事変」により、
転換炉の建造方法が失われた。

それでも10基の転換炉が残り、
それを求めて人類は戦争を起こした。
その殆どを主人公の国
ユニオンが手に入れても尚、
争いは後を絶たなかった。

そんな中、シンガルだけが
禁止されている技術開発により、
強大な戦力を用い、
最終的にユニオンを始めとした
人類が滅ぼされた。

シンガルの指導者はAIのアルカディア。
彼の計画で、人々の意識を
サーバに取り込み、
そのデータを元に
何度も何度も再生出来る。
それが理想の未来のあり方
…という考えを掲げ、
人類を滅ぼした。

その頃、彼は疑似人類という、
見た目は人と変わりないけれど、
脳が生体コンピューターの
人造人間として生まれた。
疑似人類はその生体コンピューターに、
必要なデータをインストールされ、
人に変わる労働力して、
一年の教育期間を終えた後は、
それぞれの能力に合わせた
作業を割り振られる。

人手不足だったため、
彼は他の疑似人類よりも
短い教育期間で、
ユニオンで整備の仕事をする事に。

何度教わってもうまく行かず、
いつも上司に怒られてばかり。
だから彼は思っていた。
自分にはこの仕事は
向いていないのでは?と。

いつも何かが足りなくて。
これじゃないという思いばかり。

もし自分が戦闘に特化した
疑似人類だったなら、
憧れの神殿騎士団に入れたのに
…と思いながら。

そんなある日、
彼らは整備の仕事の特権を活かし、
練習用のティアブレイドに乗り込んで、
操縦テストをして遊んでいた。

そこを運が良かったのか悪かったのか、
神殿騎士団団長のギルにみられてしまう。
ギルは主人公の兄で、
ユニオンの英雄だった。

そうしてそのギルは、面白そうだから…と、
彼に模擬戦を挑んだ。
お前が5分持ちこたえたら、
今日の事は内緒にしておいてやる
…と条件をつけて。

余りに当たり前に言われたその言葉に、
彼は思わず言ってしまったのです。
じゃあ、オレが勝った場合は…」と。

相手はユニオン1の騎士。
自分はなんて事を言っているのだろう?

彼が内心焦っている時に、
ギルは笑い、
たしかに君が勝った場合を決めないと
フェアじゃないな
…と、
彼が勝ったら神殿騎士団に
入れてくれると約束してくれた。

そうして彼は決着のつく直前に、
ギルが彼女とアイナ主任に
呼ばれたとはいえ、
模擬戦に勝利。

その後、あの勝負は無効だろうと、
あの場に居た誰もが思っていたのに、
ある日彼はギルに呼び出された。
そうして神殿騎士団の団員に任命された。

ずっと憧れていた。
けれど、疑似人類は
割り振られる仕事に合わせ、
必要な能力をインストールされるものだから、
決してなる事は出来ないと思っていたのに。

そうして彼は神殿騎士の証の剣を与えられ、
SH-D0(エスエイチディーゼロ)の
製造番号ではなく、
団長の妹で姫である彼女から、
シュドという名前を貰った。

これでみんなを守ってね
 …と剣を渡されながら。

その言葉に彼は
心が満たされるのを感じた。
そうだ、自分のやるべき事はこれなんだ。
命を掛けてみんなを守る事、
この自分に使命を与えてくれた姫を守る事。
それが自分の役割なんだ…と。

けれど、彼が騎士団に
迎え入れられて間もなく、
戦火は激しさを増した。
相手はデータを利用し、
次々と兵士を量産する。
倒しても倒しても全く数が減らないどころか、
増え続ける相手との戦いは熾烈を極めた。

そうしてユニオンの
最高指導者の息子のロウが、
ナノマシンを施され不老不死となり、
「人類の指導者」に任命された。
そうしてその時に、幼馴染の彼女は、
彼のパートナーとして選ばれた事から、
ナノマシンを施されて、
長い月日を彼と共に過ごす事に。

そうして二人を含めた全人類は、
ユニオンの最高技術で作られたシェルター、
ネオスフィアに乗り込み、
地下へと避難する事に。
その後、戦火が落ち着いた頃、
指導者として選ばれたロウの元、
再び平和へと向かう予定で。

ところが、そんな大きな計画が
敵に漏れない訳はなく、
シェルターに避難する日に、
大きな襲撃が。

そうして人類を避難させるために、
騎士団の疑似人類たちが
奮闘するもむなしく、
シンガルにより、人類は滅ぼされた。

無事に逃げられたかのように見えた
シェルター組の人類も、
内部に毒ガスをまかれ、
彼女を除く100万人が死亡した。

不老不死の施術を施された彼女は、
内蔵されたナノマシンにより、
修復再生された。

彼女が気づいたときには、
随分と長い時間が流れていて。
ネオスフィアの中には、
彼女と管理AIのクレイドルだけ。

シェルターに逃げ遅れた
ロウを探しながら、
彼女は一人で
100万人分の墓を掘り続けた。
1000年が過ぎようとした頃、
100万人分の墓を作り終え、
住民すべてを埋葬した彼女は、
未だ見つからない
ロウの事で絶望してしまった。

だって彼女には終わりがないから。
ただ同じ毎日を
もう1000年も繰り返した。
それでも今までは墓を作る仕事があった。
けれど、もうそれも終えてしまい、
唯一の希望のロウは
未だ発見出来ない。

そんな状況が彼女を追い詰めた。
悠久の時は
一人で過ごすにはあまりにも長く、
あまりにも辛いものだから。

耐えられなくなった彼女は、
ついに壊れてしまった。

そうして壊れた彼女は、
体内のナノマシンを暴走させて、
ネオスフィアを壊してしまうほと暴れ、
彼女とネオスフィアを守るためと、
一体だけ積み込まれた
人型兵器ティアブレイドにより、
なんとか暴走を止める事に成功。

しかし、壊れて暴れた彼女の体は、
もはや彼女ではなくなっていた。
そうして再生不可能な
状態になってしまった為、
クレイドルが彼女に機械の体を用意して、
再び彼女は蘇った。

暴走前に、全部忘れたいと、
そして死にたいと
何度も自傷行為を繰り返した彼女。

だからクレイドルは
彼女から記憶を消した。
彼女がここで壊れる事なく
生きて行けるようにと。

そうして過去の自分と
知らぬ間に別れを告げた彼女は、
新しい彼女として、クレイドルと
2000年もの時間を過ごしてきた。

変わらない毎日。
でも、それもいつもの事で、
そんな事も
気にならないようになってしまう程に。

けれど3000年もの
長い変化のない時間は、
二人の訪問者によって
大きく変えられた。
やって来たのはシュドとアタルヴァ。

アタルヴァは幼い頃から幽閉されて暮らし、
彼ら兄弟はその体に
途方もない長い年月の記憶を持つ。
ただひたすらに
誰かを求めてさまよう記憶。

その記憶の中で
探している相手が彼女だった。
兄によって導き出されたそれを頼りに、
教わった座標にたどり着きたくて、
シュドの育ての父を訪ねたアタルヴァ。

けれど、彼の育ての父は
肺の病で亡くなっていて、
最初は断った彼だったが、
根っからのお人好しの為、
彼を放置できず、
結局巻き込まれるように
共にネオスフィアへ。

そうして彼女と出会った。
かつて自分に生きる希望、
目的、使命をくれた
姫だと知らぬままに。

だからこれはきっと運命。
騎士団の全員の魂が囚われたあの時、
副団長が
彼の生体コンピューターの隙間に、
一つだけ命令を遺してくれたから。

その命令は彼が決めたもの。
あの日、姫様に貰ったあの言葉。

みんなを守ってね。

だから彼は「みんなを守る」を
遺す命令と決めた。
あの言葉に救われたから。
大切な言葉だったから。

そうしてお人好しのシュドとして、
3000年後の今存在し、
運命に導かれるように
再び出会った二人。

けれど、それと時を同じくし、
彼女が1000年も探し求めていた
ロウが現れたのだ。

見つけられなかった事に絶望し、
何度も死のうとしたあの時間。
すべての記憶をなくして今でも、
そのときの恐怖が残っているのか、
ロウが現れた事にひどく怯える彼女。

だから彼は思った。
守りたいと。
こんなに怯えている彼女を
オレが守らなきゃと。

そんな彼の彼女を守りたい気持ちに、
一体だけ残されたティアブレイドが応え、
彼をパイロットして迎えてくれた。
そうして突如指に指輪が現れたら、
その指輪が操縦方法を教えてくれて、
彼はロウたちを撤退させる事に成功。

そうして彼らが地上から来て、
現在の地上が
どんな状態なのかを聞いた彼女は、
クレイドルから自分なら
汚染された地上を浄化出来ると教えられ、
彼らと共に地上へいきたいと願った。

その浄化は、彼女のナノマシンの
修復機能を使用するもので、
地上のような大きなものに使ったら、
エネルギーを使い果たし
彼女の肉体が
消滅するとも知らないままに。

だから何度もクレイドルに反対されつつも、
彼らはネオスフィアで地上に出る為に、
力を合わせた。

そうして医療用再生ポットが動いた事で、
その中で死んでいたヤジュルが再生され、
彼の知識を活かし、ネオスフィアは
地上に行けるまでに回復。

けれど、当時も今も、
裏切り者はヤジュルだった。
議員としてユニオンに潜り込んでいた彼は、
アルカディアの手のものだった。

そうしてヤジュルの裏切りにより、
彼らは囚われの身に。

そんな中、アルカディアの目的は、
取り逃がした最後の人類である彼女を
ロウと二人のナノマシンを利用して、
互いを消滅される事で、
すべての人類のデータ化する事だった。

そしてロウはといえば、
長い時の中、
ひたすら彼女を探していたのは、
互いのナノマシンの力を使い、
彼女と共に
この長く苦しい時間を終わらせ
消滅する事。

ならば必要なのは自分ひとりだろう…と、
アタルヴァと彼を開放して欲しいと頼み、
彼女だけがネオスフィアに残され、
彼は自分の家のあるスラムへと戻された。

それでも諦められなかった。
彼だけでも生きて欲しいという
彼女の願いは分かっても、
彼女の居ない世界に
自分だけいきていても意味がない。
オレは彼女と生きたいんだ
…と気づいた彼に、
神殿騎士団の団員達の魂が応えてくれた。

そうして彼らは彼に見せてくれた。
3000年前に何があったのか?
彼はどこで何をしていたのかを。

すべてを思い出した彼は、
その時の姫様への想いだけでなく、
今の彼女を愛する気持ちを胸に、
騎士団の力で再びネオスフィアに。

その頃、彼女は
過去の彼女の体との融合が始まり、
それが終わると、借り物の体、
借り物の脳しか持たない今の彼女は、
この世から消失してしまう。
それでも愛する人を救えたのなら、
自分の行動には意味があると納得し、
ロウと消える覚悟だった。

けれど、彼が止めてくれた。
今の君が必要なんだ…と。

あの時、姫様に貰った
自分の生きる目的。
今度は君にそれを届けたかった。
だからお願い。
オレと一緒に行こう…
いや、オレと一緒に生きよう。


彼と生きたい。
わたしはわたしのままで。


そんな願いに過去の彼女が応えてくれた。
彼女の意識も体も消失する事なく、
過去の彼女が今の彼女に
上書きされる形で終わった融合。

見た目は今の彼女だけれど、
もう本当の体に戻っているから。
今ならナノマシンも正常に機動させられる。

彼女のその力と、
彼が取り戻した記憶により、
ティアブレイドは本来の力を発揮。
ナノマシンごとロウを取り込んだ
アルカディアの操るティアブレイドを
倒す事に成功した。

けれど、消える間際、
アルカディアはすべての転換炉が
壊れるように仕掛けていった為、
それが外に漏れたら
今度こそ地上は
終わってしまうという状態に。

回避する方法は一つ。
彼女のナノマシンを使う事。
けれど、すべての転換炉を
修復するには、
地上を浄化する以上の力を必要とする。

そう、つまりは彼女は
消えてしまうという事。

そんな事はさせられない。
オレにも出来る事はないのか?
と、
彼女を助けようとする彼の想いと、
自分が犠牲になっても、
地上を守りたいという彼女の想い。

そんな二つの想いに
応えてくれた人が居た。
それが過去の彼女。

過去の彼女は、
ナノマシンごと彼女の体から出て、
自分の力で転換炉を修復し、
更には地上も浄化するという。

そんな事をしたら消えてしまう!

彼女は過去の彼女を止めた。
一人でそんなことさせられないと。

私達の時代の責任は私達が取ります。
それに私は一人じゃないから。


そういう過去の彼女は、
ロウと一緒だった。
更には騎士団のみんなの魂が、
過去の彼女に付き従った。

そうして過去の彼女が
そのナノマシンの力で、
彼らを救い、
壊れる寸前のネオスフィアから、
ティアブレイドで脱出した彼ら。

ただ、管理AIのクレイドルは、
メインフレームが大きいため、
外に持って出られないから…と、
そのままネオスフィアと共に消える事に。

雛は飛び立ったから。
もう親鳥の役目は終わり…と。

だって彼女はもうひとりじゃない。
彼女を支え、守ってくれる
彼が隣に居てくれるから。

-----

そうして過去の彼女により、
地上は浄化され、
肺を病んでいた彼の弟を始めとした、
地上の疑似人類たちは助けられた。

彼女はといえば、
過去の彼女が出て行く時に、
彼女を普通の人間の体にしてくれた為、
もう悠久の時に
苦しむ必要はなくなっていた。
ただ愛する人に寄り添い、
彼と同じ時を生きる事が出来る。

今はなんでも屋を手伝いながら、
彼の育ての親同様に、
身寄りのない子どもたちを育てる
孤児院みたいな事も始めた二人。

自由になった彼女のやりたい事、
それはこれからも孤児院の子供達の
お世話にする事。
過去の彼女が彼に与え、
彼が命がけで今の彼女に届けてくれた、
生きる目的、役割。
それを子供達に繋いでいきたいから。

-----

人は愚かだから、
また同じ事を繰り返し、
戦争が起こり平和な世界じゃ
なくなるかもしれない。

なら、繰り返せばいい。
何度でも何度でも。
そのたびにオレたちみたいなのが出て来て、
きっと止めてみせるから。

だって、想いは繋いで行くものだから。
ずっとずっと、
3000年前から繋がっていたように、
これから先の未来にも、
繋いで行く事が出来るハズだから。