2017年3月11日土曜日

ソラユメ/朝峰涼志

立花慎之介さん演じる
涼志くんのネタバレ感想です。


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大丈夫、何も心配ないよ。
これは夢だから。
僕が描いた空夢(ソラユメ)なんだ。


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岬端にある洋館。
今では肝試しに使われるような
廃屋となっているそこには、
まだ彼女が幼い頃には
とある家族が住んでいた。

それが朝峰涼志の家族。
彼は体が弱く家から出る事が叶わず、
なかば部屋に閉じ込められている状態だった。
彼の世界は窓から見える景色だけ。
出る事の叶わない外を
ただ羨ましげに見つめていた。

そんなある日、
母親と散歩中にはぐれた彼女が、
彼の家にやって来た。
窓の外を見ていた彼は
彼女を見て驚いてしまう。
だって自分の家の庭に、
同じ年頃の女の子がいるのだから。

彼女は彼に声を掛け、迷子だと教えてくれた。
そうして淋しくないのか?と尋ねると、
さっきまでは淋しかったけど、
今は彼が居て一人じゃないから淋しくないと言う。

そんな彼女に遊びに誘われた彼。

本当は部屋を出てはいけなかった。
病気が悪化するから。
それでも彼は憧れていたから。
他の子供達みたいに、
お日様の下で友達と遊ぶ事を。

だから彼は窓から部屋を抜け出した。
夢にまで見た外の世界へと。

そうして彼女と目一杯遊んで
楽しい時間を過ごした彼。
けれど、もう日が暮れてしまい
戻らなければならなかった。

まだ遊び足りない気分の二人は、
明日は一緒に海に行こうと約束をした。

その時彼女は指輪を見つけてしまった。
それはルーエンの探している
持ち主を狂わせる恐ろしい指輪、
ヘリオトロープ。

幼い彼女は当然そんな事は知らず、
ただ明日の約束を忘れないように…と、
好意から彼にその指輪を渡した。

彼女が彼を連れ出した事。
彼女が指輪を拾い、彼に渡した事。
この2つが彼の運命を
狂わせる事になるなんて知らないままに。

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翌日、海で彼を待つ幼い彼女。
けれど彼が現れる事はなかった。

大切な約束だから、
何としても守りたかったのに。
けれど彼は約束を守る事が出来なかった。

初めて友達と遊んだ翌日、
病気の彼はその症状を悪化させ
亡くなってしまったから。

だからそれが心残りだったのか、
ヘリオトロープを首に下げた彼は、
亡くなってもなお、彼女を待ち続けた。
大事な約束で、
また彼女と遊びたかったから。

そうして長い月日が流れ、
彼女が高校二年生に。
友人の一人が岬端の祖父母のところに
滞在するのに便乗して、
彼女は再び岬端にやって来た。

あの日の約束は忘れてしまったものの、
たまたま海にやって来た彼女は、
ルーエンを喚び出す大事な指輪を
彼の霊に拾ってもらい、
再会を果た。

その再会が全ての始まりだった。

彼女は忘れていたけれど、
彼はすぐに気づいたから。
彼女があの時の女の子だって。

だから願わずには居られなかった。
あの日の約束を
どうしても果たしたかったから。

指輪の力など知らぬままに、
あの日からずっと子供な彼は、
今の彼女と同じ姿で、
もう一度彼女に会って約束を果たしたい。
もう一度遊びたいと願ってしまった。

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そうしてヘリオトロープの力で
高校生になった彼は、
彼女の学校に転校。
彼女との本当の再会を果たのです。

会えればそれで良かったはずなのに。
ひとつ叶えばまた願いが増える。
明日も彼女に会いたくなる。
もっと一緒に居たくなる。

辛いだけの幼い日の記憶の中で、
一番輝いている記憶。
それが彼女とのあの記憶だったから。
彼の大切な思い出だったから。
増え続ける願い。
その度にヘリオトロープの力を使い、
何度も何度も世界を巻き戻した。

世界の繰り返しに気づいてるのは、
彼と彼女の二人きり。
誰もいない世界で
二人になるのは無理だけれど、
その状況を利用する事で、
彼女は次第にルーエンや他の友人から離れ、
彼だけを頼りにするようになっていった。

誰も要らない。
君には僕だけが居ればいい。


始めはただ会いたいだけだったのに。
願いは積みかさなり、
いつしかひどく自分勝手なそれとなっていた。

そうして何度も
ヘリオトロープの力を使った彼は、
次第にヘリオトロープに蝕まれ、
血を求めずに居られなくなってしまった。

そのせいでルーエンに
二度も殺されそうになり、
その度に時間を戻す。

だから彼女は気づいていた。
彼がヘリオトロープの所有者だと。
でも好きになってしまったから。
認めたくなかった。
ヘリオトロープの所有者である事も、
彼が人を殺し血を得ている事も。

そうして繰り返されるおかしな世界に、
耐えられなくなった彼女は、
ルーエンの前で泣き出した事で、
その繰り返される世界は
ヘリオトロープの力だと教えられた。

そうして彼女は、
ヘリオトロープを破壊して欲しいと、
彼に剣を託された。

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それが正しい事は頭では理解出来た。
このままにしても、
いずれヘリオトロープに全て支配され、
彼の意思はなくなってしまう事も分かっている。
だから、この剣で
全てを終わらせる事が正しいと。

けれど出来なかった。
彼が好きだから。
彼が消えてしまうなんて耐えられなかったから。

でも、餘部先輩により、
天体望遠鏡で忘れていた過去を見せられ、
自分が彼を連れ出した事で彼が死んでしまった事、
自分が渡したあの指輪がヘリオトロープであった事、
死しても尚、彼女との約束を
守ろうとしてくれていた事を知った彼女は決意した。
自分のせいだから、自分で終わらせようと。
彼をヘリオトロープから解放してあげようと。

そうして今度は自らルーエンに頼み、
剣を手にした彼女は、
約束の海に行き、そこからあの洋館へ。

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彼の部屋にたどり着くと、
胸に禍々しく埋め込まれた
ヘリオトロープをはだけさせ、
自らの足にナイフを刺して座り込んでいる彼が。
もう自分を保つのがやっとで、
体が勝手に血を求め動くから、
だから歩けないようにした
と言う彼。

そんな彼に思い出した過去の出来事を詫びると、
彼は嬉しかったと笑う。
憧れていたから、外の世界に。
光に満ちた世界で君と過ごせた事が嬉しかったと。

そうして彼女は彼の胸のヘリオトロープを、
ルーエンの剣で突き刺し、彼を解放した。

涼志くん!

手を伸ばして見るものの、
彼にその手が届く事はない。

あぁ、どこで間違えてしまったんだろう。

何も知らなかったとは言え、
すべて自分の罪。
彼を部屋から連れ出す事、
彼に指輪を渡すこと、
そのどちらか一方が欠けるだけでも、
こんな事態は防げたというのに。

戻りたい、やり直したい。

強い強い彼女の願い。
それはまるで儚く消えた彼のよう…。

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幼いあの日。
母親とはぐれた彼女は洋館にたどり着いた。
窓から外を眺める彼と出会い、言葉を交わす。

一緒に遊ぼう!

そう声をかけようとした所で、
頭の中で声が響く。

ダメ、誘ってはダメ!

だから彼女は、涼志くん、
バイバイとその場を去った。

帰り道、道で指輪を見つけて、
その美しさに魅せられて拾おうとすると。

ダメ、拾ってはダメ!

また頭の中で声がした。
指輪を拾うのを止めた彼女は、
海で一人遊んでいた。

するとはぐれた母親が
彼女を見つけてこう言いました。

これから素敵な男の子を紹介するわ。
ママのお友達の息子さんで、
病気でお外には出られないの。
だからお友達になってあげて。
おうちの中でなら、
好きに遊んで大丈夫だから。
お友達のお家はとても立派な洋館なのよ。


そう、お友達の息子の名前は朝峰涼志。
彼女はさっき遊べなかった男の子に、
その後すぐに再会を果たす。

外に出なかった彼は、
体調を崩し死んでしまう事もなく、
ヘリオトロープに出会う事もない。

そんな二人の行き着く未来が、
どうか光に満ちた素敵な未来でありますように。