2017年3月20日月曜日

鏡界の白雪/欠屋左慈

斉藤壮馬さん演じる
欠屋左慈くんのネタバレ感想です。


-----☆★☆-----


君の行動は、
僕の幸せを願っての
事なのかもしれないけど、
君の居ない世界に、
幸せなんてあるはずないんだよ。


-----

母親は夫に依存してしまう女性で、
彼が生まれて間もなく、
父と離婚する事になり、
幼い彼を憎んだのです。
この子のせいで父に捨てられた…と。

父に依存しないと生きて行けない
弱い人だったから、
だから、心が壊れてしまっただけ。
母も被害者で可哀想なのかも知れない。

そうして、幼い息子を恨んだ母親は、
彼を見なくなってしまった。
もう、母の目には兄の右愛しか映らない。

だから、ご飯も右愛の分しか作らず、
お母さん、左慈の分は?
そう尋ねる息子に、

左慈は悪い子だから。
お父さんと行ってしまったのよ。
この家には右愛、あなたしか居ないわ。


彼はちゃんとそこに居るのに。
母に見て欲しい、愛して欲しいと、
幼い声を精一杯あげているのに。
彼の声はついに母に届くことがなかった。

そうして一度も存在を認めてもらう事なく、
愛してもらう事もないまま、
彼の母はこの世を去ってしまった。

一度も母親に愛されず、
存在を認めて貰えなかった彼。
そして、もう二度と
母親に愛して貰えない。

その事が原因で、
愛に飢えたまま18になり、
女の子に優しくされたいと言う理由で、
ホストの職に就いた彼。

愛に飢えるが故に一人を恐れ、
兄の居ない家に、
一人でいる事ができないから、
お客である女の子を
代わる代わる家に連れて帰り、
抱き枕と称しては添い寝してもらう日々。

誰でも良かった。
ただ一人が強かった。
寂しくてたまらなくて、
一人では居られなかった。


そんな時に出逢った彼女。
優しい彼女は、
彼の無理なワガママにも、
困った顔を見せながらも
付き合ってくれた。
アップルパイも焼いてくれた。
彼女の作るそれは、
優しくて温かい味がして、
食べると飢えた心が
満たされるような気がした。

そんな彼女と何度も共に過ごすうちに、
彼は気づいてしまった。
もう、誰でもいい訳じゃ
なくなっている事に。
一人は寂しい、だから彼女にいて欲しい。
彼女じゃなきゃダメなんだ。


そうして彼女と恋人になれて、
満たされた
穏やかな日々を過ごしていた彼。
けれど、そんな毎日は
長くは続かなかった。

彼女は、鏡界の女王に、
彼の狂気を解き放たなければ、
今は一時的に落ち着いているけれど、
また彼は寂しさに
耐えられなくなってしまう

…と警告を与えられてしまった。

どうすれば彼を助けられますか?

何より彼が大事だと思う彼女に、
女王は言った。

鏡界の彼に噛まれる度に濃くなる痣。
その痣が真っ赤に染まった時、
鏡界の彼は解き放たれ、
現実世界の彼と1つになる。


さらに女王は続けた。

けれど、彼の狂気を解き放った時、
今度は彼女が
鏡界から出られなくなる
…と。

彼の事は助けたい。
でも、自分と居ると幸せだと
言ってくれているのに、
彼の狂気を解き放つ為に、
自分が居なくなっても
大丈夫なんだろうか?


何度も自問自答を繰り返す彼女。
そうしてついに決心した。

目の前の幸せそうな彼が、
ずっとそのままで居られるのなら、
自分は彼に二度と会えなくても構わない。
彼の幸せが一番大事だから、
彼の狂気を解き放とう
…と。

そうして大晦日の夜、
とびきり楽しい時間を二人で過ごし、
彼と共に眠りについた直後、
彼女は鏡界へ。

すると今度は彼女と入れ替わるように、
鏡界の女王が、彼女の体の中に。

翌朝、目覚めた彼は
すぐに気づいてしまった。
彼女が彼女ではなくなっている事に。

そうして彼女の体を奪った女王により、
彼女は彼の為に鏡界に居て、
もう彼の元に戻る事はない
…と、
聞かされた彼。

最初こそ、彼女を失った悲しみから、
数日部屋に閉じこもってしまったものの、
彼女の事が気になり、部屋を出た彼は、
彼女の残したメモを発見。
それに導かれ、骨董屋へとたどり着き、
彼女の手紙を読んだ彼は、
彼女を取り戻す方法を骨董屋の男に聞き、
無事に彼女を取り戻す事が出来た。

彼女を取り戻した彼は、
現在は公務員を目指して勉強中。

忙しくしている兄の右愛のために、
彼の仕事を手伝いたい
…といつか話してくれた彼に、
ホストを辞めたら何をしたらいいと思う?
そう尋ねられた彼女が勧めた仕事。

まだ試験勉強している途中だけれど、
近い将来念願の公務員になり、
兄と共に区役所で働く日も遠くはないはず。

-----

公務員になれたら、
君の指に似合う指輪を探すから。
ねぇ、お願い。
一生僕だけの抱き枕で居て?