2017年3月3日金曜日

悠久のティアブレイド/アタルヴァ

寺島拓篤さん演じるアタルヴァの感想です。


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生まれて来た理由を
探し求めていたけれど、
それがロウの記憶媒体で。
そのことにショックを受けたりもしたが、
そんなものは関係なかった。

おまえと共に生きたい。

大切なのは、
生きる理由だったんだな。

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ロウが長き時を生きる為に、
収容しきれなくなった記憶を
バックアップする為に
クローンを生み出した。

そう、それが彼ら兄弟。
親もなく、目的もなく。
ただ道具として生み出された。

そうして兄弟には、
それぞれ違う記憶が入れられて、
ロウの記憶を保存するために、
彼らは幽閉されて暮らしていた。

中でも彼の兄のリグは、
兄弟の中で一番優秀だった事から、
屋敷の外に出て、
軍の仕事に係る事が出来た。

そこで知り合ったのが、
シュドの育ての父。
リグは、その優秀な頭脳を使い、
自分たちが
なんの為の存在なのかを知り、
そして記憶の持ち主であるロウが、
ずっと探していた人の
居場所まで突き止めた。
そうしてリグは屋敷を抜け出した。
弟のアタルヴァを連れて。

理由は「一番若かったから」と、
そう彼は言っていたけれど、
本当はもっと違う
何かがあったのかもしれない。

だって、彼ら兄弟には
番号しかなかったのに、
兄がアタルヴァに名をくれたのだから。
それはきっと、
ロウの記憶媒体のクローンではなく、
アタルヴァとして生きろ
という意味なのかもしれないから。

そうして途中リグを失いながらも、
ネオスフィアにたどり着いた彼は、
そこで彼女と出会い、恋を知った。

所が自分の正体を知ってしまったから。
だから分からなくなってしまった。
自分のこの想いが
本当に自分のものなのかが。

だって、記憶の主が
どれほど彼女を
求めているのか知っているから。
どれほどの時間、
彼女を探していたのかを。
果てしないほどのときの中、
ただ記憶の彼が想っていたのは、
彼女に会いたい
それだけだったから。

その後、ティアブレイドを操り、
自分の邪魔をする彼を
ロウは邪魔だと判断し、
クローンを作る際に
プロテクトとして仕込んでいた
自死機能を機動させてしまう。

そうしてアタルヴァの脳が
壊死し始めた時、
突如リグの人格が現れた。

リグは外に出る事が出来た事から、
様々な情報を集め、
予め自死機能の事も知っていて、
その為の対策として、
死ぬ直前に、彼の脳にリグの人格を
バックアップしておいた。

発動条件は、自死機能の発動。

そうして現れたリグにより、
彼が持ってきた
生体コンピューターを使用する事で、
アタルヴァを助けられる事に。

でも、自分の記憶がロウのものだと知り、
絶望の色を見せていたアタルヴァ。
あんなにも強い想いが、
彼女と共に
死ぬためのものだと知ったから。

そんな彼の
絶望を見てしまった彼女は、
今は脳の奥で
眠りについていアタルヴァを
自分たちの都合で
起こしていいものか悩む。

そうしてリグに相談したら、
君の好きにしたらいい」と。

そう、彼に訊く事も叶わない。
誰も決める事は出来ない。
目覚めた彼がどう思うかも、
目覚めてみなければ分からない。

でも、今彼女を含めたみんなは、
彼を取り戻したいと強く願っていたから。
だからその願いのままに、
彼を生体コンピューターを使い
呼び戻した。

それと同時に消滅するリグの人格と、
いつか自分の命を使わずに、
地上を浄化する方法を探す
と約束を交わして。

目覚めた彼は、
ずっと彼の人生の
すべてだったあの記憶、
それが自死機能が発動した事で、
消滅した事に気づいた。

そうして再び絶望を味わう。
だって、それだが
彼の人生だったから。

けれど、彼女と共に再び戦う中で、
彼は生まれた意味よりも、
生きる理由が大切だと気づいた。

彼女と共にありたい。

あの記憶がなくても、
確かにその想いが心にあるから。
だからその理由の為に
生きようと誓う彼。

そうしてロウのナノマシンを止める為、
転換炉を暴走させ、
ロウをティアブレイドごと封印。

その為に彼女は、
自分の本体に力を借り、
死を望んでいた彼女により、
体も機能もすべてを譲りうけた。


その後、ネオスフィアは地上に出て、
ネオスフィアの中にいることで、
地上で蔓延している病の進行を
遅らせる事が可能だと判明した事から、
地上で病に苦しむ人々を
ネオスフィアに移住された。

その仕事はシュドを始めとした
なんでも屋が担ってくれて、
元々ネオスフィアの
管理AIであったクレイドルも、
喜んで協力している。

ただ、彼は転換炉を
使用する作戦の際に、
シュドを先に行かせる為、
自らアルカディアと戦い、
機能を損傷してしまった為、
今は人との会話が
うまく出来ない状態に。

それでも、ゆっくり丁寧に伝えれば、
ちゃんとデータ管理などを
こなしてくれる。

ずっと彼女一人の
ゆりかごだった彼は、
今は沢山の人々の
ゆりかごとして働いている。

そうして彼女は、
リグとの約束を果たす為、
アタルヴァと首都に向かう事に。
そんな彼女に、
3000年もの長き時間
共に過ごしたクレイドルが、
とても小さな声で、
いってらっしゃい」と告げた。

ずっと共にあったから、
決して必要のなかったそれに、
切ない想いを感じながら、
アタルヴァと首都へ向かう彼女。

リグとの約束を果たしたら、
今度は彼と二人で旅に出る予定。
彼の兄弟たちが見る事の出来なかった
世界を沢山みたいという彼。

その彼の瞳には、
もうあの憂いはない。
ただ、彼女と共にある今と、
これからさきの未来の光だけ。