2017年3月5日日曜日

悠久のティアブレイド/ヤジュル

近藤隆さん演じるヤジュルのネタバレ感想です。


-----☆★☆-----


だから今度は
オレがお前の過去になってやる。
兄弟や仲間の仇を討ったと言う過去に。

-----

栄華を極めたユニオンは、
同盟国には
とても寛容であったものの、
非同盟国への対応はヒドイもので、
エネルギーを高額で売りつけていた。

そんなにまでして
手に入れたエネルギーでも、
使えるのは一部の富裕層のみ。
ヤジュルのような最下層の人間は、
エネルギーの恩恵に浴する事はない。

地べたを這いつくばるように生きた彼は、
少年兵として最前線に。
体は機械にされ、
脳だけ自前という状態に改造され、
戦闘に関する知識のみを
インストールされた唯の駒。

そうして最前線で戦う中、
熾烈な争いに仲間は
次々と死んで行った。
死んだ仲間の死体の山に身を隠し、
彼は必死に生き延びていた。

そんな彼の元に、
近くで死んだ仲間の頭が転がってきた。

こいつは誰だ?
確か隣で戦っていた仲間のはずだ。
けど誰なのか思い出せない。
名前も分からない。


そう、ここで死ぬという事はそう言う事。
誰なのか、何をなしたのか、
誰にも知られずに死んで、
誰にも憶えていて貰えない。

そんな人生は真っ平だ!
オレは絶対に何かを成してやる。
名前を歴史に刻んで
忘れられない人物になってやる。


何も持たない少年は、
ただ、そんな過去を刻みたいと願った。

そうして生き延びた彼は、
唯一自前であった脳も捨て、
生体コンピュータにして、
罪悪感や戦いの邪魔になる
全ての感覚を捨てた。
そうまでしても、何かを成したかったから。

戦功を上げ続けた彼は、
ついに工作員にまで上り詰め、
シンガルの工作員として雇われて
議員になりすましユニオンへ。

そうして彼とアルカディアにより、
あの人類を
滅ぼす事件は引き起こされた。

アルカディアとの取引内容は、
人類を滅ぼすような大事件を
起こしたのはヤジュルだと、
そう記憶して居て欲しいと言うもの。

それで彼はアルカディアの記憶の中で、
人類を滅ぼした大罪人として
永遠に生き続ける。

何も持たない彼が、
たった1つ望んだもの。

けれど技術主任の
アイナを殺害する際に、
騎士団団長のギルが、
ボロボロながらも駆けつけ、
二人掛かりで彼は治療ポッドへ
閉じ込められ、
そのまま殺されてしまった。

けれど満足していた。
全て仕込みは終わっていたから。
後は自分が死んでも、
人類は滅ぶのだから。

そうして彼はお望み通りの大罪人に。

-----

そんな風に終わったハズだったのに。
彼女が見つけてしまったから。
彼は突如蘇らせられた。

初めは記憶もなく、
自分が何者かも分からない中で、
彼女やシュド、アタルヴァ、
そしてクレイドルと過ごす時間が
とても楽しかった。
彼女と共にティアブレイドで戦い、
彼女を守る騎士に
なりたいとも思ったのに。

彼は全てを思い出し、
仲間として過ごした彼女達を裏切った。

シュドは頭を撃ち抜かれ、
アタルヴァは捕らえられ、
彼女もまた家に囚われてしまう。

そうして彼とロウにより、
自分の身に起きた出来事を知り、
自分は本体ではなく、
過去の自分から
脳を借りているだけの存在だと
知ってしまった彼女。

更には特別な感情を抱いていた彼は、
過去の自分の
大切な人たちを奪った相手、
そう、今の彼女を生み出した張本人。

そうして一度は彼を
恨みの感情から殺そうとしたものの、
その怒りや恨みの感情は、
自分自身のものではなく、
過去の彼女のものだと気付き、
今の自分は例え裏切り者だとしても、
彼を殺す事など出来ない事を理解した。

だって、彼が好きだから。
どんな罪を背負っていても
生きていて欲しかったから。

そうして今の彼女は、
怒りを収めたものの、
過去の彼女は違っていた。

過去の彼女は怒りに支配され、
もうその感情しか無くなってしまい、
再び化け物と化した。

そんな過去の彼女の暴走を止める為、
2人は力を合わせ世界を救った。
そして過去の彼女のナノマシンの力が
ロウのそれより上回った事から、
その力を騎士達が
地上の汚染物質へと向け、
地上の浄化にも成功した。

けれど暴走を止める戦いで、
ヤジュルの体は消滅してしまった為、
過去の彼女の世界に
彼女を助けにきたものの、
共に帰る事は出来なくなってしまった。

お前が憶えててくれるなら、
オレは満足して死ねる。


彼の言葉に嘘はないだろう。
けれど彼女は納得しなかった。
だからナノマシンに願った。

彼が苦しんで
最後まで生きるのを見届けるから、
お願い、ヤジュルを助けて!
と。

意思の力が上回れば、
人1人の体を再生するくらい、
ナノマシンなら造作もない。

そうして2人は
ナノマシンの対消滅に巻き込まれ、
消えてしまった。

それから三年の月日が流れたある日、
2人の願いは聞き届けられ、蘇った。
死んでいたのか、どこにいたのか、
それは2人とも分からない。
地上でもネオスフィアでも無いところで、
多分一時的に
消滅していたのかも知れない。

かつて、何も持たなかった少女と、
何かを得ようとした少年は、
こうしてそれぞれに手にいれた。
互いに大切だと思える相手を。

-----

3000年もの時を超えて2人は出会い、
そうしてオレ達は手に入れた。

誰よりも何よりも大切な
掛け替えのないたった1人を。