2017年3月10日金曜日

ソラユメ/山瀬勇人

阪口大助さん演じる山瀬くんのネタバレ感想です。


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嫌なんだ。
俺のせいで誰かが泣くのは。
俺のせいでおまえが泣くのは。


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小さい頃は普通に仲のいい幼馴染だったと思う。
いつも一緒に居たし、二人で色んな事をした。

祭りに行って怒られたこともあった。
夜中にやる神の花嫁を見たいっておまえが言って、
でも夜中だから子供はダメって言われたのに、
二人でコッソリ見に行って。

その時の事、
おまえは忘れてるかも知れないけど、
あの時、俺、結婚して欲しいって言ったんだ。
そしたら、「かっこよくなったら」って言われて。
でも、それじゃ分からないから、
かっこいいってどれくらいなのか訊ねた俺に、
ふどうみょうおう」って答えたんだよな。

あの頃からずっと変わらない。
俺はずっとおまえが好き。

なのに、中学の時、
突然おまえに「山瀬くん」って呼ばれた時には、
かなりショックだったのを覚えてる。

それ以来、何となく二人の間に距離が出来て、
昔みたいな関係じゃいられなくなったんだ。

それでも気持ちは変わらなかった。
あの幼い日にプロポーズした時のまま、
ずっと好きだったんだ。

そんな風に離れてしまった俺たちだったけど、
水窪の田舎にみんなで行った事をキッカケに、
また少しずつ近づけた。

なのに、祭りの頃に
その気持ちを親に気づかれて。
そうして知らされた事実。
俺の家系はちょっと特殊なんだって。

俺たちの街は、
その昔人ならざるものが集められ、
学校の裏山で斬首されていた。
その任に就いていた家系がうちの家系。
代々妖なんかの斬首を行い、
その返り血を
たっぷりと浴び続けた俺の家系は、
見た目は普通の人間と変わらないし、
特に変わった能力があるわけでもないのに、
その血が人と違ってしまったんだ。

だからこの血で哭気を抑える事もできたし、
人ならざるものに血を浴びせれば、
奴らを弱らせる事も。
場合によっては
死に至らしめる事も出来るんだ。

そんな特異な血筋だから、
そんな俺がおまえの側にいる事で、
人ならざる者が側に居るおまえを狙う。

そう釘を刺されたんだ。

好きだから、大切だから。
おまえが俺のせいで
傷つくのなんて見たくない。
おまえが俺のせいで
泣くのなんて耐えられない。


出来てしまった二人の距離が、
少しずつ縮まり始めたと思ったのに、
俺はおまえから
離れなきゃならなくなったんだ。

それでも祭りで一緒に回りたくて、
自分の気持ちを優先させた結果、
おまえは何者かに襲われた。

あぁ、本当なんだ。
俺が側に居ると、
大切なやつを守るどころか、
危険な目にあわせるんだ。


やっと親の話を理解した俺は、
俺にもう近づかないでくれ」って、
おまえにそう伝えた。
本当は側に居たいのに。

辛かった、悲しかった。
けど、それでも構わない。
おまえが無事ならそれでいい。


そう思っていたのに、
結局俺の言葉はおまえを傷つけてしまった。

だから結局離れられなくて、
おまえの家に行って泊まった翌日、
家の周りが哭気だらけになってたのを見た時、
猛烈に反省した。

気持ちに負けて側に居たからこの有様だ。

それでも離れたくないって、
側にいたいって、そう言ってくれたから。
だから決めたんだ。
全部解決しようって。
俺の血を使えば浄化出来るから、
全部終わらせて、
そうしておまえを安心させてやりたいって。

俺の話に自分も行きたいと言うおまえに、
キスをして睡眠薬を飲ませ、
後のことはルーエンさんに任せて
一人出て行ったのに。
処刑場の浄化がうまくいかず、
要の公園へと向かうとそこにはおまえがいて、
ユウトと呼ばれた子供にまた狙われていた。

助けに入った俺は、全然ユウトに敵わなくて、
首を絞められながら聞いたアイツの言葉に、
なんだかその気持ちが分かっちゃってさ。
そうしたら黙っていられなくなったんだ。

忘れ去られた存在だと嘆くあいつに、
半分体を貸してやるって思わず言ってたんだ。

だってさ、気持ちが分かったから。
俺がおまえを好きなように、
こいつもおまえを好きなんだって。

だから忘れられた事が悲しくて、
どうしても側に居たいって執着してる。

それは俺だって同じだから。
だから、全部って訳には行かないけど、
半分だけ、そいつに
貸してやってもいいかなって。
同じやつを好きな気持ちが
同居するだけだろって。

そんな俺の気持ちにユウトは応えてくれたのか、
優しい人格が現れ、
俺がもしもの時の為にルーエンさんに渡し、
おまえがここに持ってきた俺の血を飲み干した。
その血で自分が消えると知りながら。

哭気と自分が同調してるから、
自分が消えれば哭気も消えて、
街は浄化されるから
…と。

そう思えたのは、俺の言葉があったからだと、
そうあいつは言ってくれた。

そうして哭気は消え、
人に触れると死に至らしめるという危険ごと、
ユウトが連れ去ってくれたんだ。
そうして訪れた平穏な日々。
今では「勇人くん」と
呼んで貰えて付き合うように。

そうそう、名前の一件は、
まだ事件が解決していない頃、
どうして山瀬呼びになったのか、
おまえが話してくれたんだよな。

あれは中二の時、
俺はろくに話した事もない女子に告白されてて。
もちろん話した事もないから、
ごめんなさいって流れになったんだ。
好きなやつ居るから…と。

そしたら、それはおまえなのか?と訊かれて、
そうだ」と答えたところでおまえが現れたから、
凄い驚いてさ。
その顔がどうやらおまえには、
勇人くんと呼ばれた事に対して、
嫌そうな顔をしたように見えたみたいで。

俺が山瀬くんと呼ばれてショックを受けたように、
おまえも俺のその表情にショックを受けて、
以来勇人くんって呼べなくなったんだよな。

その件については、ちゃんと説明して、
誤解は解いたのに、
結局なかなか山瀬くん呼びが
直らなかったおまえなのに、
付き合ってってちゃんと言葉にしたあの時から、
また勇人くんって呼んでくれるようになったんだ。

山瀬くん」そう呼ばれるようになり、
二人の間に出来た距離は、こんなにも縮まった。
手を伸ばせばいつだって触れられるほどに。