2017年3月4日土曜日

下天の華 with 夢灯り/徳川家康

小野賢章さん演じる徳川家康さんのネタバレ感想です。


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薬として人を助けてくれるような植物を、
僕は絶対、毒として使ったりはしません。


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それはまだ彼が幼かった頃、
武家である彼の家は、
彼を織田家の人質として差し出しました。

織田家の人々は、彼にとても親切で、
だから彼は、自由に野山を駆け回り、
武芸を学び、学問を学ぶ事が出来た。
決して辛い人質時代ではなかったのです。

だから彼は気づかなかった。
周りの人間、
織田に使える他の家の子供が、
人質である彼が優遇される事に、
不満をいだいているなんて。
だって彼はまだ幼かったから。

そんな彼に、ある日とある武家の姫が、
私を嫁にしなさい!
…と言い寄って来た。

あなた、年の割に背も高いし、
顔も綺麗だから気に入ったわ。
私を嫁に迎えなさいよ。
人質のあなたに、
私の家の家柄はもったいないくらいよ。
さぁ、嫁に迎えるって言いなさいよ!


強くそう迫る武家の姫。

でも、僕はあなたの事を良く知らないですし、
第一、人質の身である僕の一存で、
そのような大事な事を決めるわけには…。


困ってしまう彼。

そうして執拗に彼に抱きつき迫る姫に、
耐えられなくなった彼は、
離してください!…と、
姫を自分から引き剥がした。

した事はただそれだけ。

なのに、姫は引き剥がされたその力で倒れ、
たまたま姫が倒れた所に、
運悪く木の枝が出ていて、
怪我をしてしまった。

怪我は幸い大した事はなかったものの、
プライドを傷つけられたのでしょう。
人質のくせに…と。

だから姫の家に、
何度もお詫びに訪ねたものの、
一度も会って貰う事はかなわないまま、
噂が流されてしまった。

人質の分際で織田家家臣の姫に迫り、
断られた事に腹を立てて怪我をさせた…と。

そうして彼はその一連の出来事から、
女性はもろく傷つきやすいから怖い。
敵に回すと、
恐ろしい存在なのだと思い知った。

以来、ただ女性が怖くて、
顔もまともに見られなくなり、
そんな自分の視線を隠すため、
前髪を伸ばし、顔を隠してしまった彼。

武芸に秀で、政治の知識も豊富、
薬学にも通じていて、調剤も得意。
そんな多才な人でありながら、
おどおどと、
いつも自信なさげな領主に育ってしまった彼。

そんな彼の元に突然現れた明智の姫。
信長の頼みにより、
時折彼の家を訪れては、
逃げてしまう程女性が苦手な彼に、
いつも根気強く付き合ってくれた。

そうして時折共に出かけ、
彼が趣味の薬草の話をしても、
普通の人がつまらながるような話をしても、
とても楽しそうに耳を傾けてくれる彼女に、
次第に惹かれて行った。

けれど、彼は知ってしまった。
彼女は明智の姫ではなく、
光秀により雇われた忍びだった事を。
そうして光秀が企てた
信行を陥れる罠のため、
鳥兜から毒を作った事を知った彼は、
失望した。

彼にとってそれは人を癒やす薬草。
けれど、忍びの彼女にとって、
それは人を殺める毒草。

一度はとても近づいた二人の距離が、
彼が彼女に失望した事で、
再び離れてしまった。

けれど、彼女にそう告げた後、
彼は思い出した。
いつからか、
彼女がとても辛そうにしていた事を。

忍び故に、主の命には逆らえない。
だから鳥兜から毒を作ったものの、
それを悔いていたから、
彼女はあんなにも辛そうにしていたのだ…と。

確かに僕は彼女の行動に傷ついたけれど、
彼女もまた、
僕の言葉に傷ついたに違いない。


そう後悔したものの、
そのまま信長と共に上洛する事になった彼は、
本能寺へと向かう事に。

道すがら、飛んできてくれた鳥に、
彼女との事や、後悔を聞いて貰った彼。
鳥の正体が変化の術を使った彼女だと知らずに。

そうして夜を迎え、
信行の軍勢が、信長を亡きものとするため、
本能寺を襲撃。

普段は刀を使う事を好まない彼も、
刀で必死に戦った。
武芸に秀でている彼は、
剣の腕は素晴らしくとても強い。
けれど多勢に無勢。
一人では到底かなわない。

もう無理かもしれない。

僅かに諦めの気持ちが生まれた頃、
彼女は現れたのです。
くないを手に、彼を助けに。

続いて、安土で留守を
預かってくれているはずの、
彼の家臣たちも、大勢駆けつけて、
信長と彼を助けてくれたのです。

命がけで彼を助けに来てくれた彼女と、
燃え盛る本能寺で共に戦った後、
彼は心に決めました。
立派な領主になろう…と。

信長の夢見る天下。
穏やかで優しい時間がそこにはあり、
その時間を民を護るため、
立派な領主になりたいと。

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時間はかかってしまうかもしれません。
とても果てしない道のりかもしれません。
だけど、どうか、
僕と共にその道を歩んでもらえませんか?
あなたが側にいてくれるのなら、
きっと辿り着ける気がするから。