2017年4月6日木曜日

Enkeltbillet/仲谷恵

松岡禎丞さん演じる
仲谷恵のネタバレ感想です。


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歌舞伎役者村川藤十郎の
息子として生まれた彼。
長男である彼は、
母の恵子のいち文字をもらい、
恵と名付けられ、
将来は父の跡を継ぐべく育てられた。

父と仲谷さんとの関係は、
親子というよりは師弟。
師匠である彼に稽古をつけてもらう毎日。

学校にもあまり通う事が出来ず、
友達も作れなかった。
そんな毎日に不満を感じていましたし、
そんな風にした父親に恨みを抱いていた。
殺したいとまで思った事もあった。

それでもなんとか歌舞伎の跡取りとしての
暮らしを続けていた。
所が中学の修学旅行の時に、
公演と重なった為、
修学旅行の不参加が決まった時、
彼は先生から聞いてしまった。

ずっと「特別」と言われて来た。
それは父が歌舞伎役者だからだと思っていた。
所が実際はそれだけの意味ではなかった。
父が彼が学校を休みがちでも
卒業出来るように
…と、
多額の寄付金を学校に払っていた
という事実を先生により知らされた彼。

それを聞いて愕然とした彼は、
もう我慢の限界で、
こんな家出て行ってやる!と心に決めた。

そうして彼は親に言われるまま
付属の高校に進むのではなく、
外部の高校を受験。
そうして高校生になった時、
とあるソファーとの出会いがきっかけで、
彼は家具職人になりたい!
自分にはこれしかない!と思った。
それからというもの、
留学の為に英語の勉強をして、
さらには留学する為に
大学受験をする為の勉強。
そうして努力の末に、無事に大学に合格、
その大学からアーベスタの
王立建築大学に留学する事が出来た。

村川藤十郎の息子として
特別扱いをするヤツらばかりの
あの国が嫌いだった。
そうしてその国の人間が嫌いだった。

自分は海外に出るのだからと
必死に英語をマスターしたのに、
喋れもしないくせに、
ツアーで海外に行く日本人なんて、
本当にムカつく材料でしかなった。

そんな時に知り合った彼女。
初めての海外でスーツケースはなくなるし、
バッグを盗まれ、
パスポートもなければお金もない。
挙句の果てには言葉も分からない。
そんな状況でパニックになっていた時に、
出会ってしまった二人。

英語もしゃべれないくせに
海外に来るから悪いんだ!


彼女の事もそんな風に切って捨てた彼。
所が、そんな彼の元に、父から連絡があり、
アーベスタに来るという。
それだけでも迷惑な話なのに、
彼の寮の部屋に泊まりたいと言う父。

そこで彼は考えた。
大スターの村川藤十郎が
決して泊まる事のないような、
潰れかけの寂れたホテルを
予約してやろう
…と。

ささやかな仕返し。

そうして選ばれたのが
ホテル・リュース。
あの日、冷たく突き放した
日本人の女の子が
お世話になっているなんて知らずに。

そうして再会した二人だったが、
よれば触れば喧嘩をする始末。
けれど、そんな風に
喧嘩をしあっているうちに、
いいたい事を遠慮せず言い合える関係は、
そう悪いものでもなく、
父が来た事でぐちゃぐちゃになってきた心の内を、
気付いたら彼女に打ち明けるまでに。

父が来た理由は
バラエティー番組の撮影の為
という名目だったが、
父の本当の目的は、彼と話す事だった。

そうして突然告げられた離婚の話。
だからどっちに行くか決めて欲しい
…と言う父に戸惑う彼。

そんな彼の話を彼女は勿論、
彼女の縁で知り合った
リュースの宿泊客たちも聞いてくれた。
中でも、境遇が近い、
アレックスとはいい友達に。

あの家が嫌いだった。
あの世界がイヤで飛び出した。
小さい頃から、
離婚してしまえばいいんだ!
…そうなんども思ってきた。
けれど、いざ離婚と言われると、
とても複雑な気分になってしまう。

そうして父は言う。
恵ちゃんの決断次第では、
二度と会えないと思って、
こうしてアーベスタまで来たんだ
…と。

そんな父に
オーディションのチラシを渡されて、
彼の心は揺れた。
エキストラのオーディションで、
もしもその気があるなら受けてみるといい。
それで村川の名前を出さずに
自力で登って来い
…と。

家具職人になりたいと思っていた。
それが自分の夢だと。
けれど、それは
逃げていただけなのかも知れない。
跡継ぎを弟に押し付けて、
父という大きすぎる存在から。

だから見ない振りをしていたものの、
本当は芝居が好きで、
役者として父に
認められたかったのかも知れない。

そうして日本に戻り、
役者として一から頑張って、
いつか父に認められる事を
目標に日本に帰る決意をした彼は、
彼女を見送った後、
オーディションの為、帰国。

父に勧められた
エキストラの役から始まり、
自分の力で少しずつ
役者としても認められるようになった。

彼女とは、いつか父に
認められたと思えた時に、
ニューヨークで再会しよう
…と約束。
その時まで彼女は英語を頑張って、
再会の時には英語で会話する
…と。

その約束の為に必死に頑張っていた彼。
けれどいつしか仕事に必死になりすぎて、
彼女の事がおざなりになってしまい。
気付いたらあの大切な約束は
色褪せようとしていた。

そんな時、主演映画を見たという
父から電話があり、
役者としてはまだまだだが、いい作品だった。
ラストシーンでは感動して泣いたよ
…と連絡が。

やっと認められた!と思った時、
無性に彼女に会いたくなった彼。
この日の為に、
5年間会いたいのに我慢して来たのだから。

そうして彼女に電話をしたものの、
ここ一年、忙しくて
ろくに連絡も出来なかったからか、
彼女のケータイの番号は変わっていて
繋がらない。

再会しようと約束して、
こんなに好きなのに、
俺はあいつの住所もなにも分からない。


途方にくれた彼は、
アーベスタで増島添乗員さんに貰った
名刺を思い出した。
困った事があったら、
ここに電話してください
」と。

思わずそこに電話をかけると、
案内の女性に電話番号を教えられた。
それは増島さんの番号で、
ご用件は彼女の事ですよね?」と。

そうして彼に
12月24日にニューヨークで」と、
彼女に伝えてくれ…と頼み、
ニューヨークに飛び立った彼。

辿り着いたニューヨーク。
けれど細かい場所を指定していなかった為、
彼女を見つける事が出来ず、
困っていた所に、彼のケータイに電話が。
相手はあの日再会を約束した彼女。

そうしてやっと再会を果たした二人。
彼女はあれから英語を必死に勉強して、
現在は増島の旅行会社で
通訳の仕事をしているんだとか。
彼の目覚ましい活躍に、
彼を諦める為、
最初に務めた会社を一年前に退社。
その時に電話番号も
変えてしまっていたんだとか。

一緒になって欲しい…という彼と共に、
またアーベスタのあのホテルに
二人で泊まりに行きたいね
と、
クリスマス・イブの
ニューヨークの街を歩く二人。

結婚して仕事がなくなるようなら、
俺もそれまでだったって事だ

と笑う彼。

今まで一つ一つ努力を積み重ねて
手に入れたものだから、
そんな事くらいでは
揺るがないという自信が感じられた。

有名俳優との結婚は
大変かもしれないけれど、
5年間も離れていても
同じ想いを抱き続けた二人だから、
きっとこれからも
幸せに暮らしていく事でしょう。