2017年5月23日火曜日

剣が君/鈴懸/幸魂:祝福の風

逢坂良太さん演じる
鈴懸のネタバレ感想です。


-----☆★☆-----



彼は貧しい村の貧しい家で生まれ、
生まれてまもなく、
口減らしで高尾山に捨てられた。
そんな時、偶然捨てられた
赤ん坊の彼を見つけた
高尾山の天狗カルラ。
彼は薬に人間の臓物を使いたいという
妖らしい理由から、
その赤ん坊を拾った。
すると、彼の夢に神様が現れて、

その赤子は将来天下五剣を手に、
この日の本を救う者。
殺したりせずに大切に育てなさい。


そうお告げをして行ったのだ。

そのお告げに従い、
カルラは彼を育てた。
初めは妖の棲まう山に
人間の子供が居る事を
良しとしない妖たちに、
嫌がらせをされた彼。
けれど、どんなに転んでも
怪我をしても、
彼は泣くことも怒る事もせず、
ニコニコと笑っていた。

そんな心優しい彼に
転機が訪れたのは6歳の時。
高尾山が山火事に襲われた際に、
彼は覚醒し、自然の声を
聞く事が出来るようになった。

以来、そんな彼を
妖たちも受け入れて、
仲間としてみんなで
大事に育ててくれた。
天狗のカルラは剣術や術、
そして医学について教え、
ぬらりひょんが彼に
薬学を教えてくれた。

そうして18歳になった彼は、
剣の腕も立ち、医学的知識も豊富な、
立派な青年に育った。

けれど彼は人間。
ずっと高尾山で妖と共に
生きていくのは好ましくない。

そう判断したカルラが、
彼に江戸に出て、
新しい夢を見つけなさい。
そうして人として生きていくように

…と、彼を江戸へと送り出した。

到着した彼は、
先立つモノが必要という事で、
花嫁行列の護衛を
幕府が探している事を聞き、応募。
柳生のお眼鏡にかない、
無事に護衛の任を任された。

そうして偽の姫役の彼女と出会い、
慣れない御役目と
初めての旅で緊張している彼女に、
いつも優しく接してくれた。

彼は彼女の乗る馬を引いたのだが、
自然の声を聞く事が出来るので、
馬と心をかよわせる事が出来た。
そんな彼は、とてもやさしく
馬の事も扱っていた。

花嫁行列の道中、鬼の山賊に襲われ、
一度彼女がさらわれてしまうのだが、
彼が助けてくれた。
その後6人の用心棒は
無事に合流する事が出来たが、
鬼の攻撃の際に、ふた手に分断され、
徳川サイドのメンバーとは別行動。
用心棒6人と彼女とで、
花嫁行列を続ける事になった。

その時に侍女代わりに、
一番信頼出来る者を従者として
傍に置いておくようにしよう

…と彼らから提案があり、
一番一緒に過ごしていた彼に
その役を任せた事で、
一段と距離を縮めた二人。

そうして駿府到着後、
無事に徳川サイドのメンバーとも合流。
花嫁行列の報酬を貰い、
それぞれ駿府で一泊後、
自分たちの行くべき道へと進んで行った。

-----

江戸に戻った彼女は
父の営む茶屋の手伝いをしていたが、
用事を頼まれて外に出た時に、
知らない男の子に道を訊かれた。

その彼は、
何故か耳もしっぽも生えていて。
それが気になった彼女はつい、
あの…しっぽ…」と
言ってしまった。

慌てた彼は、そのまま踵を返して
逃げて行ったが、
その時にお財布を落としてしまい、
それを拾った彼女は、
彼が困るのでは?と心配し、
急いで後を追いかけた。

たどり着いたのは森の奥地。
そこで神威と名乗る
医者の弟子と知り合い、
彼に事情を話した所、
きっと变化に失敗した化け狸だろうと。
そうしてアイヌ出身の彼は、
森の妖精である木霊にたずねて、
彼の居場所を聞き出してくれたのだ。

ひどく落ち込んでいるみたいだから、
脅かさないように
声を掛けてやるといいよ
…と、
とてもやさしく教えてくれた。

神威のお陰で、
無事にお財布を返す事が出来、
また化け狸は
友達の人間の男の子の為に、
家を貸してくれる所を探していて、
それを訊ねたかった事が判明。

翌日、その人間の男の子も交えて、
紹介出来そうな空き家を
案内する事になった。

そうして翌日訪ねてみると、
その化け狸はなんと彼の友達で、
家を探しているのは鈴懸だった。

彼を連れて、空き家があるという
裏通りの長屋に案内して、
大家に彼を「お医者さまです」と紹介。

大家にも、彼女の紹介であることや、
若いのに医学の知識も豊富な
医者である事から信用を得た彼。
すぐに部屋を貸して貰える事に。

その長屋に決めた理由が、
あまりに病気の人が多いから
…という、彼らしい理由だった。
彼には理解出来なかったのだ。
貧しいからと医者にかかれない事が。
人は等しく医者に
診て貰えるべきだと考えるから。

その当時、医者の資格は必要なく、
医者を名乗る人々は
払いの悪い貧しい長屋の住人よりも、
沢山お金を持っている
富裕層を相手にする方が楽だし儲かる。
そんな理由から、貧しい人にとって、
診療所の敷居は大変高いものだった。

優しい彼は、
長屋に住むとすぐに診療所を始め、
お金のない長屋の人々の事も
親切に診察し、
お金は元気になってからで
大丈夫だから
」と、
いつもニコニコしているような、
そんな優しい医者だった。

だからこの現状をなんとかしたくて、
彼女の案内で江戸城に行き、
門番を気絶させ、そのまま城内に侵入。
長屋の人々が医者に
かかれるようにして欲しい!
と、
家光に直談判したのだった。

家光は、そんな率直な彼が気に入り、
御前試合で優勝したら、
そなたの願いをなんでも叶える

…と約束してくれた。

そうして忙しく
診療所の仕事をしながら
御前試合への参加。
彼は見た目は優しそうなのに、
身軽だし剣の腕も立つので、
順調に勝ち進んだ。

そうして迎えた決勝戦。
彼女も当然応援に行く予定だったが、
長屋のおじいさんが熱を出し、
彼が看病していた為、
試合に出る彼に代わり彼女が看病する事に。

傍に居られないながらも、
彼の勝利を祈る彼女。

そんな時、長屋に
借金の取り立てに男がやって来た。
女性から無理にお金を
取り立てようとしているのを
見かねた彼女は、助けに入り、
剣を抜いた借金取りの男に、
斬られてしまった。

そして倒れた彼女を
心配した化け狸が人間の姿に変じ、
試合前の控室の彼の元に。
彼女が斬られて倒れたんだ、
鈴懸、助けて!
…と。

もう後一歩で優勝という所まで
来ていた彼だったが、
御前試合の優勝よりもずっと、
彼女の命は重かった。
だから彼は試合を放り出し彼女の元へ。

そうして彼が薬を処方し、
彼女の手当をしてくれた。

熱が下るまで時間はかかったものの、
彼の特製薬膳粥も食べられた
彼女の様子に安堵した。
ちょっと出かけてくるから、
寝て待ってて

そう言って出て行く彼を見送って
彼女は眠ってしまったのだ。

しばらくすると、
神威が彼を担ぐように戻ってきた。
見ると、彼は体中に傷を負っている。
どうしたのか?と訊ねても、
なんでもないよ。心配ないから」と、
頼りなく笑う彼。

そうして神威が教えてくれた。
御前試合は
将軍の前で行われる神聖なもの。
それを勝手な都合で
放り出す事は罪なのだ…と。
けれど、黙っていて
しばらく江戸城に近づかなければ、
それでそんな罪は帳消しになるのに、
この男は馬鹿正直にお詫びに来たんだ
…と。
そうしてその場に居合わせた
徳川の侍達に袋たたきにされた彼。
たまたまそこを神威と師匠が通りかかり
助けてくれたんだとか。

それを聞いて申し訳なく思う彼女に、

僕が一番大事なのは君で、
もちろんみんなの事も守りたいけど、
一番守りたいのは君なんだ。
一番大事な人を守れないなら、
みんなの事だって、
守れる訳がないから。


そう優しく言ってくれた彼。

彼女と心を通わせた事で、
彼は江戸の街でこれからも、
診療所の医者として、
みんなの為に働きたい。
そうしていつも
一番大事な一番大好きな彼女を、
誰よりも傍で守りたい

…と思うようになったのだ。

カルラに見つけろと言われた
新しい夢は、こんな風に始まった。

そうしていつも笑顔で手伝いに来る彼女は、
父の茶屋だけでなく、彼の診療所でも、
すっかり看板娘となっていた。

彼と共に過ごし、元々優しい彼女は
どんどん優しくなって。
そのおかげだろうか?
彼女にも木霊が見え、
木霊の声が聴こえるように。

彼しか知らなかった世界。
彼女はそれを見て、
聞く事が出来るようになったのだ。

それはきっと心の綺麗な二人だけの
とても美しい世界。
これからもその優しい心で、
沢山の人々を救って行く事だろう。