2017年5月24日水曜日

剣が君/螢/幸魂:優しい門出

KENNさん演じる
螢のネタバレ感想です。


-----☆★☆-----


約束の山吹1000本だ。
こんなもんで結婚を許してもらっちゃ
簡単過ぎるだろ?
もっと他にやることないのか?
大事な娘をもらうんだ、
あんたはもっと俺に
無理難題をふっかけていいんだぜ。


-----

螢は、奉行所の十手持ちをしている
頼れる兄貴タイプ。
花嫁行列に
用心棒として参加した理由も、
見回りに行っている長屋で
三郎三が借金をしてしまい、
それが返せず、娘のお里が
連れて行かれそうになったのを助ける為、
彼の借金の10両を返すために参加。

彼は異常に力に執着していて、
御前試合にも参加したが、
自分の力を江戸のみんなに認めさせたいと、
そんな彼の異常なまでの力への執着を
初めは彼女も理解出来なかった。
けれど、彼が鬼である事を知り、
それを理解する事となった。

その昔、人鬼の乱という
人と鬼族の争いがあった。
その時、負けてしまった鬼族は
刀を奪われ帯刀を禁じられた。
そんな鬼族の彼の住む村は、
ある時ならず者に焼き払われ、
その時彼は両親を失った。

理不尽な暴力。
ただ鬼族であるというだけで
振るわれた力。
けれど振りかかる火の粉を
払う術を持たなかったのだ。
刀を持つことを許されない
鬼族の彼らは、
ただ理不尽な暴力の前に
為す術もなく膝をおるしかなかった。

だから力が欲しかった。
あの日自分が無力だったから、
父の命が、母の命が奪われた。
だから力が欲しかった。
もう二度と大切なものを
失ってしまわぬように。

彼は人鬼の乱の
鬼側の総大将を務めた鬼の王族、
温羅の末裔。
御前試合で優勝し、
天下五剣を手にする事になれば、
嫌でも素性を明かすことになる。
そうして自分が鬼族だと知れる事で、
鬼の力を認めて貰い、再び鬼も、
人間と同様に暮らせる世の中を
作る足がかりになるのでは?

王族である彼はそう考えた。

鬼である彼は、鉢巻で角を隠し、
人間であるように見せて、
江戸の町の十手持ちとして、
町の治安を守ってきた。

そうして花嫁行列でも、
素性を隠したまま、
盗賊として現れた鬼の事も、
悪事は悪事、同胞だからなどとは考えず、
刃を交えて彼女を救ってくれた。

その後、江戸で再会した時も、
十手持ちの仕事として、
御前試合で賑わう町の治安を守る為、
見回りを担当して金さんに連れられ
挨拶に来た時だった。

その後、彼が御前試合に
参加する事を聞いたり、
鈴懸と再会し、
螢さんの鉢巻に触れようとした鈴懸を
力任せに弾き飛ばしたり…と、
なんだか粗忽者のような様子を
見せられたりと、
彼女とは何度もスレ違ってしまう。

ある日、彼女の留守に
彼女の家の茶屋を訊ねた彼。
彼女の父に進められるがまま、
お茶を御馳走になった時、
娘が煮た豆が
美味しく出来たのでどうぞ
」と言われ、
鬼族は豆を食べると
蕁麻疹が出てしまうため、
普段は決して食べないのだが、
嬉しそうに勧める父の笑顔や、
彼女の手料理だという事で、
思い切って食べてくれたのだ。

慌てて帰宅したため、彼女の店に
金子を落としてしまった彼。
それに気付いた彼女の父は、
彼女にそれを届けるように頼み、
奉行所で彼の住まいを聞き
訪ねて行った。

迎えてくれたのは
優しそうなおばあさんで、
金子の事を話すと、
今具合が悪くて寝ているのだけど、
直接渡してあげてちょうだい

…と言われた彼女。

そう、彼は彼女のお父さんの笑顔と、
彼女の手作りに負けて、
豆を食べてしまったが、
やはり体はそれに耐えられず、
蕁麻疹で寝込んでしまっていたのだ。

ぶっきらぼうで、口が悪い。
乱暴な所もあるけれど、
根はとても優しい彼。

その後、彼の祖母と親しくなった彼女は、
美味しいお茶を御馳走になったお礼に…と、
刺繍が趣味の母親の形見の
綺麗な糸などを祖母に届けた。
彼の祖母は、刺繍がとても得意で、
それを売って
収入を得ている程だったから。

そうしてそれを届ける道中、
ばあちゃんに刺繍を習ったらどうだ?
という彼の提案で、週に一度、
祖母の元に通うようになった彼女。

所がある日、そんな彼の祖母が
寝込んでしまったと、
螢さんの一番弟子の
かむろに聞いた彼女は、
慌てて彼の家を訪ねた。

ばあちゃんの事は心配ない
…という彼に、
医者を呼ぶというと激怒。

何も知らない彼女は驚いたが、
彼は鬼の素性を隠して居るため、
例え祖母の具合が悪くても、
医者に診てもらう訳には
行かなかったのだ。

そうして病に効く
湧き水を汲みに行くと言う彼に、
半ば無理やりついていった彼女。
道中話をしながら歩いていると、
誰かが傍についててくれるって事が、
こんなに心強いって知らなかった
」と、
彼女が傍に居る事を
とても喜んでくれたのだ。

所が彼女が湧き水で脚を滑らせ、
誤って頭から水を被ってしまったため、
そのまま濡れた着物で帰ると
風邪をひくから
…と、
彼に着物を脱ぐように言われ、
しぶしぶ無防備な格好になった彼女。

彼が着物を干しに行っている間に、
そこに黒羽が現れた。
とっさの事に、
きゃーっ、螢、助けて!
と彼女は悲鳴をあげてしまった。

すぐに黒羽だとわかり、
事情を話したものの、
悲鳴を聞きつけた彼は、
黒羽へと刃を向ける。

だって思い出してしまったから。
彼女の悲鳴と共に、
あの日、自分の村が焼かれ、
両親を失った時の恐怖を。

コイツだけは絶対に失う訳には行かない!

そうして怒りに任せて剣をふるう彼は、
雷の力を発動してしまった。
その力は鬼族のみが使えるもので、
黒羽はそれに興味を覚え、
彼の鉢巻を切って、
鬼である事を確認したのだ。

最初こそ驚いたものの、
鬼であっても螢は螢。
彼が優しい事には変わりないと思えた彼女は、
ふたりきりで湧き水の
泉のほとりで話をした。

恐怖に怯えて
指先まで冷たくしている彼。
きっと何度も
辛い思いをしてきたに違いない。
彼が鬼だというだけで、
彼は彼として見て貰えない。
どんなに親しくなったとしても、
鬼と分かれば
手のひらを返したように冷たくされ、
みんな自分の傍からいなくなる。
そんな事を繰り返して来たから。

それでも変わらず傍に
居てくれる彼女に安堵した彼。

彼が鬼と分かってから、
彼女は今まで誤解してしまった
すべての出来事に納得出来るように。

あぁ、そうか。
どれも彼が素性を隠す為に
必要な事だったんだ。


…と、理解出来たから。

その後、彼の祖父が
許嫁を連れて来た事から、
二人の仲が
ぎくしゃくしたりしてしまったが、
その許嫁の女性も、
実は慕っている男性が居て、
彼が江戸に居る事から、
結婚の話に乗る形で、
江戸に彼に会いにやって来たのだった。

戻った祖父に、御前試合で
おまえ一人が頑張った所で、
なにが変わると言うのだ?

と言われた事と、
訪ねて来た呉葉が
熱を出した事から御前試合を棄権。

呉葉の事と御前試合の事で、
彼が変わってしまったと
誤解した彼女とは、
喧嘩になってしまった。

そんな時、許嫁の呉葉に、
自分は江戸で愛する人と
幸せになりたいと思うと、
侍を紹介された彼は、
そんな強い彼女に背中を押され、
彼女に好きだと告げ、
一緒になって欲しいと言ったのだ。

御前試合で、
自分の力を見せつける事で、
鬼族の立場を変えようとしていた彼。
けれどそれは、
違うという事に気付いたのだ。

まずは一番大事な彼女と
自分が幸せになる事。
そうする事で人と鬼も
こうして歩み寄り分かり合い、
互いに手を取り幸せになれるのだと、
みんなに分かってもらいたい。
それをきっかけとして、
少しずつ両者の関係をいいものにして、
鬼も人も関係なく、
幸せに暮らせる世界を作りたい。


そう思うようになった。

そんな決意のある彼だから、
鬼である事を伏せていれば、
彼女の父にも
祝福してもらう事は簡単なのに。
誠実な彼は、
本当の意味で祝福されたい。
両親の居ない自分に
父親が出来るのだから、
本当の意味で家族になりたい!
…という思いから、
彼女の父に、鬼である事を明かした。

当然、江戸の民にとって
鬼とは悪のようなもの、
受け入れて貰えるはずはない。
彼はすぐに追い返されてしまった。

そうなる事も分かった上で、
彼女にそんな言葉を聞かせない為、
敢えて彼女の留守を狙い訪ねたのも、
また彼の優しさだった。

その後、諦めずに彼女の父に
話をしに通う彼。
今度は彼女と三人で話をしたが、
その話でしたら、娘はやれません!
の一点張り。

それでも諦めないという
強い意志のある彼は、
1つずつ困り事を聞いて、
全部解決してみせるというのだ。

そんな彼の真摯な想いには
心を打たれたものの、
この子の母親が
この子の結婚式には
山吹を千本摘んでお祝いしたいと
言っていた

という話を持ち出した彼女の父。

だから明日の母親の命日までに
1000本の山吹を摘んでこれたなら、
この子との結婚を認めましょう。
ただし、明け方に間に合わなければ、
金輪際この子に近寄らないでください。


そんな無理難題をふっかけたのだ。
今年は山吹の咲きが悪いと
知っている彼女も、
どうしてそんな嘘を言うの?
父さまなんて、最低よ!

と父を怒った。
けれど、そんな言葉を
彼に諭されてしまう。
父ちゃんはおまえの事を
本当に心配して言ってるんだ。
だからそんな事を言うもんじゃねぇ。
父ちゃんに謝れ
」と。

山吹1000本でいいんだな?
それくらいで
こいつと一緒になれるなら、
いくらでも摘んできてやるよ!


不敵な笑みを浮かべ、
そう言い放った彼。
彼は約束を決して違えない誠実な人。
だからどんな事をしても、
絶対に山吹を1000本摘んで来てくれる。

そう信じて彼をひたすら待つ彼女。

一方大きな事を言ったものの、
山では全く山吹を見つけられない彼。
子分のかむろと困り果てていた所、
黒羽がそこに現れた。
森の中に居た彼に山吹の事を訊ねると、
見かけた場所を教えてくれた。

そうして二人の手を借りつつ、
彼は崖から落ち、
怪我をしたりもしたが、
彼女の父の要求通り、
山吹を1000本摘んで帰ってきたのだ。

そうして笑顔で告げた。

約束の山吹1000本だ。
こんなもんで結婚を許してもらっちゃ
簡単過ぎるだろ?
もっと他にやることないのか?
大事な娘をもらうんだ、
あんたはもっと俺に
無理難題をふっかけていいんだぜ。


笑ってそう言う彼。

どんな無理難題だって、
アイツと一緒になる為なら、
こなしてみせる
と自信ありげに。

そんな彼の真っ直ぐな想いに
心を打たれた彼女の父は、
螢さんになら娘を任せられる…と、
結婚を承諾してくれた。

その後、彼のふるさと
吉備の国の鬼ノ城で
二人の結婚式が行われた。
鬼ノ城の鬼族の人たちはみな優しく、
彼女の嫁入りを
大変祝福してくれた。
そして人間の彼女の親友や、
かむろなど、沢山の人が
二人の門出を祝いに来てくれた。

今まで鬼である事で
苦労して来た彼だったが、
ちゃんと鬼というフィルター抜きで、
彼を彼として見てくれる、
そんな人間たちも沢山居る事に
気付く事が出来たのだ。

彼女との出会いが、
鬼である事を隠していた彼に、
鬼である事の誇りを
思い出させてくれたのかも知れない。

今はまだ本の小さな世界。
それでも人間も鬼も垣根なんてなく、
共に祝福し合える場所があるのだから、
この小さな輪を少しずつ大きくして、
いつか日の本全体に、
そんな垣根などなく、
鬼も人も幸せに暮らせる世界が
きっと訪れるに違いない。
彼らが築いていくに違いない。

-----

おまえはやっぱすげぇ女だぜ。
俺はずっと一人だった。
けど、おまえと一緒になるためならば…と、
いろんなヤツが協力してくれたんだ。
そうして俺は本当の仲間を手に入れた。