2017年5月27日土曜日

剣が君/九十九丸/幸魂:共に生きる幸せ

小野友樹さん演じる
九十九丸のネタバレ感想です。



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九十九丸は陸奥の国出身の侍で、
旅籠の息子。
田宮流居合の伝書をもらう為の条件が、
剣取りをする事だった事から、
江戸に単身やって来た。

彼の実の両親は災害に巻き込まれ
既に他界している。
その時、彼も巻き込まれたが、
それ以前の記憶を失ったものの、
彼一人が無事に助けられ、
今は旅籠を営む夫婦が育ての親として、
彼の面倒を見てくれていた。

花嫁行列に参加したのは
路銀が尽きてしまって、
御前試合までにお金を稼ぎたかったから。

そうして花嫁行列の中で、
彼女や仲間たちと過ごす内に、
彼女との間に絆の芽生えた。

所が花嫁行列の報酬である
10両なのですが、
彼は道中とある宿場で
宿の高価な花瓶を壊してしまい、
その弁償代として、
全額取り上げられてしまった。

それでも剣取りの為
江戸に向かった彼だが、
何日も食べずに過ごし、
行き倒れ寸前の所に彼女と遭遇。
たまたまおにぎりを持っていた
彼女に助けられ無事に江戸に。

口入屋の紹介で、御前試合の間、
住み込みで働く所を探してもらうと、
なんと御前試合で忙しくなる為、
労働力を必要として、
口入屋に頼んでいた彼女の父の営む茶屋に、
使用人としてやって来たのが彼だった。

思わぬ形で再会を果たした二人は、
同じ家に住んだ事で、更に絆が深まり、
お互い大事な存在に。

そんな中、御前試合で
鈴懸と当たった時に、
彼は異様な状態を見せ、
その事で天海という僧侶に
声を掛けられた。

天海は一度死んで、
反魂呪により蘇ったという人で、
彼もそうであると教えてくれたのだ。

天海の言葉に、色々な事に納得した彼。
彼は胸に大きなキズがあるし、
左腕も変色しいつも包帯を巻いているし、
体温も以上に低いし、
食べても食べても大きくならないし…と、
本人もそれらの事が
ずっと気になっていたから。

胸の大きなキズは、
災害に巻き込まれた時のものだ
…そう村のみんなは教えてくれたが、
どう見ても刀傷だったので、
おそらくそれが原因で
一度死人になったのだろうと。

左腕の変色した皮膚は、
皮膚の病気ではなく、
おそらく死んでしまったために、
そこが腐敗したものだろうと。
体温が低いのも死人だから。

食べても食べても
災害にあったとされる15歳の頃のまま、
成長が止まっている二十歳の彼。
それも彼が蘇る為に
彼の中に居るマレビトが、
彼の成長分を吸収してしまっている為、
彼自体が成長する事が
出来無いからだろうと。

そうして彼はすべての真相を知る為、
故郷に戻る事に。
そんな彼にどうしても
ついていくと言う彼女。
初めは陸奥の国への道中は
男でも厳しいから、
お嬢さんを連れて行けない

…と頑なに拒んでいた彼だが、
彼女は父も説得し、
彼に半ば無理やりついて行った。

彼は居合の師匠の元を訪ね、
真相を知る事に。

彼の父は剣取り試合で一番刀になり、
天下五剣の一つを
授けられるような立派な侍。
所が彼の母と離縁して、
彼とふたりきりになったある日、
剣取り以来、
何かを悩んでいる風だった彼の父は、
山に修行に入ってしまった。

そこで一人になった
彼は旅籠に引き取られ、
村のみんなが大切に育ててくれた。

そんな中、彼が母のように、
姉のように慕っている女性が居たのだが、
その家が借金を返す事が出来ず、
借金取りに彼女が
連れて行かれそうになったのだ。
大好きなお姉さんのピンチに、
まだ15歳の彼は、彼女を護ろうとした。
その時、渡世人である借金取りに
胸を大きく斬られてしまった。

その傷が致命傷となり、わずか15歳で、
彼は命を落としてしまった。

その知らせを聞いた彼の父は、
痛く悲しんで、山で修行の際に、
ある人から禁術である
反魂呪を受け継いで居た事から、
その禁術を使い、
自らの命を犠牲にする事で、
愛する息子を蘇らせたのだ。

その後、記憶をなくした彼に、
両親は災害に巻き込まれてなくなり、
彼もそれに巻き込まれ
記憶がないんだ
…と教えて、
変わらず村のみんなで面倒を見てくれたのだ。

所が、彼が剣取りの為に
江戸に出ると言い出して。
彼の父が、剣取り後、
悩むことが多くなった事を
見ていた村のみんなは、
旅籠の息子に剣術など必要ない…と、
彼の剣取りに反対したものの、
彼は家出同然で江戸に出てしまった。

父の山での様子も、その後、
当時父と共に修業していた僧侶から
聞く事が出来たが、
彼を忌々しそうに見ていたその人は、
最後にふたりきりになった時に、
彼に陸奥の国から早く出て行け
…と言ったのだ。
禁術のせいでこの国寺のイメージが
悪くなったのを払拭した所なのに、
あなたがいると、また禁術の事が
噂されてしまうから
…と。

命を亡くし、両親を失くし、
彼はこうして生まれ育った故郷をも
失くしてしまったのだ。

けれど、江戸がある。
茶屋の旦那さんもお嬢さんも
家族だと自分を温かく迎えてくれている。


そう思った時に、

本来生きているハズのない
自分のような存在が、
大切なあの家族の傍に居る事は
迷惑なのではないか?


そんな風に思った彼は、
やっぱり行く当てを失くしてしまう。

そんな彼のマイナスの心に
つけ込んだマレビトは、
その体を支配し彼女をさらい、
常世に連れ去った。
自分の花嫁とする為に。

そうして意識を操られた彼は、
そのまま三途の川を渡ろうとするが、
必死で止める彼女。
彼の二十歳の姿をしたマレビトと、
未だ15歳のまま成長の止まっている本物の彼。
彼女の抵抗のお陰で
意識を取り戻した彼は、
マレビトである二十歳の自分と戦事に。

けれど二人は二人で一人。
相手に傷をつける事で、
自らが傷ついてしまう。

ボロボロになった二人を
ただ見ている事しか出来無い彼女は、
常世の景色の中で歪んだ場所を見つけた。
目を凝らすとそこに現世が見えたのだ。

だから彼女はボロボロの
彼の手を引いて
必死にそこに向かう。
体を返せと追いかけてくる
マレビトから逃げながら。
振り返ると彼の体は
黒い闇に包まれて居ました。

もうだめかもしれない。
彼を連れて帰れないかもしれない。


そう思っても諦められなかった。
だってまだ好きだって
彼に伝えて居なかったから。
彼の居ない世界なんて
考えられなかったから。

そうして彼女は
必死に彼の手離す事なく歩き続けた。

一方もう完全に諦めていた彼。
すべての感覚もなくなり、
もうこのまま本当に死んでしまうと思った時、
手が暖かい事に気付いた。

なんで暖かいんだろう?
あぁ、そうか。
お嬢さんがこんな俺の手を
必死に引いてくれているから。
彼女は諦めずにこんなにも強く
俺の手を握ってくれている。


だから諦める訳には行かない。
俺はまだ彼女に伝えて居ないから。
彼女と共に生きたい
と。

そうして彼はマレビトと再び戦った。

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目を開けた彼女。
見えるのは現世の景色。
しっかりと握っていたハズのその手には、
彼の手は見当たらない。

辺りを見渡してみたものの、
どこにも彼を見付けられない。

悲しくなって
泣き出してしまいたくなりましたが、

諦める訳には行かない。
絶対九十九丸を探すんだ!


そう決意して歩き出した彼女の元に、
彼の鳩のハヤトが飛んできました。
そうして、彼に主人の事を訊ねると
案内してくれた。

彼女が見つけたのは、
よく知っている彼ではなく、
二十歳のあのマレビトの姿をし彼だった。
けれど中身はちゃんとあの頃の彼のままで、
目を覚ました彼は、
しっかりとその鼓動を聞かせてくれた。
そうして以前は冷たかったハズのその体は、
抱きしめてくれるととても暖かいのだ。

そう、彼はマレビトに打ち勝ったのだ。
どうしても彼女を守る為に生きたい!
そんな彼の強い思いに、
マレビトは応えてくれたのだ。

そうして彼は、反魂呪で蘇った、
成長出来無い冷たい体の彼ではなく、
ちゃんと二十歳の大人の姿となり、
残りの生涯を全う出来る事になった。

その後、彼女の父の営む
茶屋の若旦那として、
彼女と共に幸せに暮らす事でしょう。