2017年5月7日日曜日

百花百狼/服部半蔵

津田健次郎さん演じる
服部半蔵さんのネタバレ感想です。


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俺は今のおまえを誇りに思っている。

だからもういいのだ。
おまえは死んではならぬ。

生きて欲しい。
そう思ったのはおまえしかおらぬ。
俺にはおまえしかいない。


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伊賀の忍びだった彼は、
伊賀が滅びるずっと前に、
里を離れ、家康に使えていた。

彼女の母のかがりとは、
年も近く、幼馴染のような存在だった。

そんな彼女の母に、
家康の任務を遂行中に再会し、
身ごもっているかがりが、
彼に「連れて逃げて欲しい」と頼んだ事があった。

伊賀が滅んだ事も、
かがりが甲賀の長に嫁いだ事も知っていた。
困っている様子なのも見て取れた。

しかし、彼は忍び。
任務を遂行する事が最優先。
だから答えた。

今は任務中ゆえ、請け負えぬ。

…と。

でも、彼女に出会ったから。
あの時の事を思い出しては悔やんでしまう。
あの時彼が助けていたのなら、
彼女の母は自害せずに済んだだろうか?と。

決してそんな事を考える事などなかったのに。
いつも任務が、主の命が最優先。
それが忍びという道具の定め。
心など必要ない…と思っていたから。

所が家康に命じられ、
秀吉殺しの大罪人とされた彼女が、
秀頼の後見人争いの駒にされ、
忍びに命を狙われる事となった時、
その彼女の命を守る事に。

最初はただの任務だった。
役目だから守っていたハズだった。

けれど、自分とは正反対の
いつも心をひらいている彼女と
三月にも渡り旅をしているうちに、
彼の中で何かが変わってきた。

弱く守られる存在だったハズなのに、
彼女は「生きたい」と彼に告げた。
辛く苦しい中、必死に前に進もうとしていた。
そんな姿に心が動き、
いつしか彼女に忍びの技を教えるように。

そうして徳川を除く
五大老の差し向けた忍びを
共にかわすうちに、
二人の呼吸はピタリとあい、
背中を預けあって戦う程に。
互いの死角を互いに補い合いながら。

彼は気づいていた。
自分が導いたこの忍びは、
既に徳川忍組をも超えていると。

二人ですべての忍びを退け、
もう追われる事はない…と、
一息ついた頃、新手が現れた。

投げられた武器を見て、
彼女もそれがどこの忍びなのか
瞬時に気づいてしまった。

だって、それは自分の里のものだったから。

何処かで信じていた。
甲賀が自分を追う事なんてないと。
それは彼女の願望でもあったのかも知れない。
けれど、その考えが甘かった。

忍びを退けられた徳川以外の五大老は、
それぞれ4人が甲賀を雇った。

雇われた甲賀は、
4つの組に別れ、
それぞれの大老の依頼により、
同じ里の仲間であった彼女を討つ事に。

選ばれた忍びの中には、
共に京での任務もこなし、
幼い頃より共に過ごした
伽羅、猿之介、霞…そして蝶治郎も居た。

その事を教えてくれたが月下丸だった。

元々月下丸が彼女を伏見の牢から助け、
忍びに襲われて毒針にやられた所を
半蔵が助け、月下丸に解毒剤を飲ませて、
彼女だけを連れ去った。
それが彼の任務だったから。

そうして彼の解毒剤で命を救われた月下丸は、
猿之介から事情をきき、
再会した弟の黒雪とともに、
彼女を助ける事に。

久しぶりに会った彼女が、
忍びとしての腕を上げて、
更には彼を信頼している様子を見た二人は、
側で守るのではなく、
自分たちが殺す事なく
甲賀の忍びを退ける形で、
彼女を守る事を決意した。

二人にとって、
彼女はとても大切だったから。
たとえ彼女が選んだのが
彼だったとしても。

二人に助けられ、先を急ぐ彼ら。
けれど、行く先に待っていたのは、
甲賀の忍びの中でも、
特に彼女と親しかった者たち、
猿之介、伽羅、霞、そして蝶治郎だった。

傷つけたくない。
でも、生きたい。
彼に救われた大切な命だから。


そんな彼女の想いに気づいた彼は、
彼女に「傷つけたくないのならかわし続けろ
と言う。
おまえには俺がついている」と。

その言葉を励みに、
猿之介達三人を必死にかわす彼女。
残る一人の蝶治郎は、
彼が一人で対する事に。

最強の忍びと呼ばれる彼。
常の彼ならば、
もう少し楽に戦えたかも知れない。
けれど、彼女と過ごす中に、
彼女への想いが芽生えてしまったから。
彼女が傷つけないと望むのならば、
それを叶えてやりたいと思った彼は、
気絶させる…というやり方で戦う事に。

更には、友からの執拗な攻撃に、
時に彼女が負けそうな心になると、
彼女のサポートに入り、
かわし続けろ、俺がいる」と
言葉を掛けた。

ギリギリの戦いの中、
それでもあと少しでかわしきれるという所で、
彼女の体力が限界になり、
霞のはなった武器が彼女目掛けて飛んできた。

かわせない!

そう思った彼女を突然現れた彼が、
抱き込むように庇い、
その背に大きなキズを負った。

無事に全員を気絶させる事に成功したものの、
彼の傷はかなりの深手。
にもかかわらず、
そのタイミングで、
今度は彼女の父、甲賀の長が現れた。

そこで知らされた衝撃の事実。
それは彼女の母は自害ではなく、
父に殺されたという悲ししいものだった。

彼女の母のかがりは、
伊賀に伝わる秘薬の製造方法を知っていて。
彼女の父はそれが欲しかった。
だから身重の彼女の母に、
子供を殺されたくなかったら作れ」と命じ、
伊賀では禁止されていたそれを
手に入れる事に成功した。

そしてそんな夫を許せなかったかがりは、
夫を殺そうとしたものの、
夫により返り討ちに。

そうして彼女の母は、
まだ幼い彼女を残してこの世を去った。

その秘薬が、
彼女と戦いたくない願う霞を
無理やり彼女と戦わせるために
使われた丸薬だった。

彼女の父が考えているのは、
いつも自分の事ばかり。
周りの人を人とも思わず、
すべて自分の意のままに動かせる
道具のように思っていた人。

真実を知り怒りを覚えた彼女は、
彼と共に父を討った。

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甲賀をも退けた二人は、
そのまま街道を使い、
忍びの隠れ里を目指した。

そんなある夜、
宿場に泊まった時の事、
彼の元に家康からの命が届いた。

彼女を始末せよ。

そう伝えられた。

なぜ俺なのだ?
なぜ彼女なのだ?


主の命令は絶対で、
忍びは心を閉ざして
ただ命令に従う道具。

ずっとそうして生きてきたのに。
大切な人と出会ってしまったから、
大切だという想いを知ってしまったから。

彼は初めて主の命を
素直に聞く事をためらってしまった。

そうして再び旅が始まり、
人気の少ない場所へと出た所で、
ここでお願いします
と彼に告げた彼女。

彼との生活の中で、
忍びの腕を磨いた彼女は、
彼が深夜に部屋を出た事に気づき、
家康からの新しい命令が、
自分を始末する事だと知っていた。

それにとうに決心はついていた。
五右衛門にさらわれそうになった時、
彼の任務の内容が変わったらどうするか?
そう問われた時に、
彼女はハッキリと答えていた。

半蔵様に救われた命。
だからその時は精一杯戦います。
それが半蔵様への恩返しになると思うから。


…と。

だから戦うつもりだった。
そうして二人は対峙したものの、
彼が先に膝をついた。
まだ刃を交える前に。

だって、無理だと思ったから。

今までは任務とあればなんでも出来た。
けれど今回ばかりは無理だった。
彼女だけは討てなかった。
彼が唯一生きて欲しいと願った人だから。
彼が唯一愛した人だから。

その後、徳川忍組と
彼女と共に戦い、
甲賀のものを傷つけなかった彼の為に、
彼女もまた徳川忍組を
誰一人として傷つける事なく退けた。

そうして二人が隠れ里についた時、
そこには既に家康が待っていて。
彼女が討たれた証が必要だと。

度重なる戦いで
血に染まった彼女の装束の一部を
その証拠として彼は家康と共に持ち帰った。
彼女に想いを伝えてから。

しばらくして彼は家康の元を去る事に。
彼女と共に戦った際に、
背中に受けた傷が原因で、
以前のような忍び働きが出来なくなったから。

家康は武士の身分を与えるから
…と彼を引き止めたものの、
忍び働きで仕えられないのなら去ります
…と、忍びの隠れ里を目指した。
愛する彼女の待つ里へ。

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生きて欲しいと思ったのはおまえだけ。
愛おしいと思ったのもおまえだけ。

だからこれからは俺と共に生きてくれ。