2017年5月25日木曜日

DYNAMIC CHORD feat.Liar-S V edition/榛名宗太郎

斉藤壮馬さん演じる
榛名宗太郎のネタバレ感想です。


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ごめんね。
私はまだ弱いから、
あなたを守れる王子様になれそうにないの。

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彼の母は華道の家元の
家に生まれたお嬢様。
母が恋した相手とは、
家柄が釣り合わないからと反対された。

それでも愛し合っていたから。
だから二人は駆け落ちした。

そうして生まれたのが彼。

駆け落ちした両親の暮らしは、
決して楽なものではなく、
とても貧しい暮らしながらも、
愛し合う両親と共にくらした日々は
とても幸せなものだった。

所が、父が病で亡くなってしまったのだ。
まだ彼が幼い頃に。

以来、母親は昼と夜と仕事を掛け持ちして、
女手一つで彼を育ててくれた。
どんなに忙しくても、どんなに大変でも、
母は笑顔を絶やさない素敵な人だった。
そしてそんな母が彼は大好きだった。

貧しいながらも
母ひとり子一人の生活は
幸せな日々だった。

そんな二人の生活は、
母の従兄弟の登場で激変した。
おじさんは
母が駆け落ちしたのを知ってから、
彼の母の行方を探していて。
夫を失くして
息子と二人で暮らしている二人に
手を差し伸べてくれたのだ。

幸せではあったものの、
今日食べるものに困る事も在るほど、
二人の暮らしは貧しいものだったから。

失った夫を愛していた母は、
おじさんの申し出を断ったのだが、
育ち盛りの子供がいるんだから
…と説得され、
おじさんの家で世話になる事に。

食べるものに困る暮らしから、
物に恵まれた暮らしになり、
彼はただただそれが嬉しかった。
おじさんは優しくしてくれたし、
彼に何でも与えてくれたから。

だから気づかなかったのだ。
手遅れになるまでずっと。
あんなに笑顔だった母が、
笑わなくなっていた事に。

けれど、ある日の夜、
目覚めた彼が水を飲もうと部屋を出た時、
おじさんの部屋があいていて、
その中で母が性的虐待を受けている所を
見てしまったのだ。

でも彼には何も出来なかった。
母が辛い目にあっていると知っても尚、
助ける事が出来なかった。

そうしてついにその時がやって来きた。
彼が学校から帰ると、
母の姿が家から消えていたのだ。

もう耐えきれなくなった母は、
息子を置き去りにして、
家を逃げ出してしまった。
彼に置き手紙を残して。

母が居なくなった事に気づいたおじさんは、
ひどく落ち込み、彼に泣きついた。
母にそっくりな彼に。

そうしておじさんが望むまま、
彼は女装をし、母の身代わりとなった。

その事が原因なのだろう。
その頃から彼は、
女のように振る舞う方が
楽だと感じるようになっていた。

そうして女装をさせられている彼の様子を
心配した近所の人の通報で、
おじさんは本家から縁を切られて、
彼は母の実家に引き取られる事に。

けれど、女のように振る舞う彼を
どう扱っていいのか、
実家の人々は分からないまま
彼を持て余してしまう。

そんな周りの空気を察した彼は、
そこに居場所を見つけられず、
大学進学に合わせて一人暮らしを始めた。

実家を出て一人暮らしを始めたものの、
やはり居場所は見つけられない彼。
寂しくて苦しくて。
そんな時、S-leeperと出会い、
彼らの音楽に衝撃を受けた。

その後、ベースが抜けた事で、
芹に頼んで新しいベースとして
S-leeperに参加。

最初は千哉や朔良とうまくやれず、
苦労した事もあったものの、
人当たりのいい彼は、
いつしか彼らの仲間として認められるように。
そうして彼には新しい居場所が出来て、
彼らはLiar-sとしてデビューする事に。

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デビュー後、朔良と千哉が、
心に問題を抱える事となり、
Liar-s存続の危機に見舞われた時、
Liar-s公認の『友達』として任命された彼女とは、
同じ大学の同じ外国語学部だった。

心を開かない二人を相手に、
何度も傷つけられながらも
懸命にLiar-sの為に頑張る彼女は、
女の子でありながらも
彼には王子様のように見えた。

私、Liar-sの王子様になれてるかな?

彼が王子様を探している事から、
そんな風に訊き、
頑張り続ける彼女を
愛おしく思うのにそう時間は掛からなかった。

けれど、愛おしいと思えば思う程、
彼の王子様になりたがる彼女が
不憫に思えてしまう。

女の子はね、お姫様なのよ。
だからちゃんとあなたを
守ってくれる王子様を探さないと。

気づいていた。
本当はずっと前から。
なのに気づかないふりをして、
居心地がいいからと彼女の傍に居続けた。
彼女の想いに応える勇気もないくせに。

だって私は弱いから。
あなたを愛したとしても
あなたを守れる王子にはなれないから。

そんな理由で
彼女を諦めようとしていた。

けれど彼女が芹に告白された事を知り、
更に芹に呼び出され、
芹が彼女を自分のものに
しようとしているのを見た時、
彼の体は自然と動いてしまったのだ。

あの子は誰にも渡さない!

そんな強い感情に突き動かされて。

そうして彼はやっと
本当の想いを彼女に伝える事が出来た。

あなたが好きよ…と。

まだ完全に男に戻る勇気はないから、
彼女の前でだけ
時折男を見せるだけだけれど。
もう少し勇気が持てるようになったら、
彼女の王子様として、
いつでも男として
振る舞えるようになれるかも知れない。

それでもLiar-sのハルちゃんを
ファンの子は求めているから、
今のハルちゃんを捨てる事も
出来ないのだけれど。

私だけが知っている特別な姿みたいで、
今のままが嬉しい。 

彼女にそんな可愛い事を言われたらなおさら。

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今はまだ完全に
男に戻る勇気がないけど、
いつかあなたの前でだけは
ずっと王子様で
居られるようになりたいから。

だからそれまでは、
半分お姫様、半分王子様で居させてね。