2017年6月3日土曜日

DYNAMIC CHORD feat.Liar-S V edition/檜山朔良

寺島拓篤さん演じる
檜山朔良のネタバレ感想です。


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あんたは俺の歌を
誰より真剣に受け止めてくれる。
さっき、涙を流すあんたを見て、
そう感じたんだ。

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母は体が弱く病気がちだったものの、
父と母と姉と彼と、
家族は仲良く暮らしていた。

体調の良い日は、
彼の大好きなオムライスを作ってくれた母が
彼はとても好きだった。

オムライスが美味しくなる魔法、
掛けてあげましょうね。

そう言って、
あまり上手とは言えない絵を
オムライスの上にケチャップで描いてくれた母。

そんな温かい家庭で育った彼は、
家族をとても大切に思っていた。

けれど、病弱だった母は早くに亡くなり、
彼の家は父と姉と彼の三人になってしまった。
大好きな母が居なくなった事で、
少しさびしくなった彼の家。
それでも家族で仲良く暮らしていた。

所が今度は姉が嫁いでしまい、
彼の家には父と彼の二人きり。
随分と淋しい家になってしまった。

ちょうどその頃、
友達の誘いでライブハウスで歌を歌った。
するとその歌がとても好評で、
彼自信も驚いてしまう。

俺はなんの特技もない
平凡なヤツだと思っていたのに。

時折ライブハウスのオーナーの
ジンさんに頼んでは、
人前で歌を歌っていた彼。

いつしかそこは彼の居場所になった。
みんなが彼の歌を喜んで、
彼という存在を認めてくれるから。

弁護士をしていて真面目な父だったが、
彼が音楽に没頭する姿に、
父もそれを認めてくれていた。

その後、同じ中学だった槇に誘われ、
芹の作ったS-leeperに
ギターボーカルとして加入。
すぐに仲間と打ち解けた彼は、
S-leeperが大好きになった。

そうして最初はコピーバンドだった彼らが、
いつしか千哉の作るオリジナル曲を
演奏するバントとなり、次第に人気バンドに。

とても楽しかった。
すべてが上手く行っていたし、
とても充実していた。

いつかこいつらとメジャーデビューして、
千哉の曲を沢山の人に届けるんだ。

いつしかそれが彼の夢となった。

所が、槇が将来の事を考えた結果
…として、バンドを抜ける事に。

デビューも夢じゃないかも知れない。

そんな手応えも感じていた所だったのに。

そうしてベースの抜けたS-leeperに、
芹の紹介で宗太郎が。
それを気にバンド名も
Liar-Sへと変更した。

新しくなった彼のバンドは、
更に人気となり、
すぐメジャーデビューの話が出たのだ。
みんな喜んでそれを受け、
デビュー曲は
ドラマのタイアップもあり、大ヒット。
彼らは瞬く間に人気バンドに。

所がそこから何かが狂い始めた。

人気が出た事で、
彼と千哉のビジュアルが注目され、
彼らはデビュー曲と
二人のビジュアルばかりを求められるように。

千哉がどんなに素敵な曲を作り、
彼がどんなに思いを込めて歌おうとも、
誰もそれを聴いてなどくれなかった。

そうして気づいた時には、
Liar-Sはデビュー曲と顔がいいだけのバンド
…と呼ばれるように。

そうしていつしか彼は歌えなくなってしまった。
観客の前で、以前のようには。

出来上がった違和感だらけの
チグハグな演奏のLiar-S。
それでも観客は喜んで応援してくれる。

あぁ、そうか。
ファンだとか言ってもそういう事か。
こいつらも俺たちのデビュー曲と
ビジュアルがあればいいんだ。

そうして歌だけが自分を表現出来る場で、
千哉の歌を沢山の人に
届ける事が好きだった彼は、
もう居なくなってしまった。

ただ、惰性で歌うだけのヴォーカル。
いつか沈んでしまう
Liar-Sという泥舟の上で。

そんな時、海外から戻った彼女は、
すぐさま彼らの演奏の違和感に気付き、
そうして芹により、
Liar-S公認の『友達』に任命された。

何度冷たくしても突き放しても、
彼女はしつこく食らいついてきた。
そうして彼の歌を欲してくれた。
S-leeperの頃の輝きのあるあの歌を。

最初は適当な事を
言っていると思っていた彼も、
次第に彼女の熱意が本物だと気づいた。

けど、出来なかった。
もう分からないんだ。
どうやって歌えばいいのか。

そうしてどんどん苦しくなった。
彼女の熱意に、想いに応えたい。
でもやり方が分からないから。

そうして「逃げ出したい」という彼に、
じゃあ、逃げちゃいましょう
だなんて、無茶苦茶な事を言った彼女は、
彼と共に宛もなく電車に飛び乗った。

途中行き先を訪ねられた彼は、
海に行きたい」と言ったのだが、
幸いにも飛び乗った電車の
終着駅が海だったのだ。

海でただはしゃいで、
逃げ出した事で色々なしがらみから
開放された彼は、
久しぶりに歌いたいと思ったのだ。
あの頃のように、思い切り。

そうしてやっと歌いたいという気持ちを
思い出した彼は、
後から彼女の電話に応えるように
彼らを迎えに来てくれた芹たちと合流した際に、
千哉に新曲を歌いたいと伝えた。

そうしてLiar-Sは
S-leeperの頃のような輝きを取り戻し、
再起を図る為、
ひたすら新曲の練習に明け暮れた。

けどもう辛くはなかった。
ただ楽しかった。
歌う事が、音を奏でる事が。

そうして迎えた夏フェス。
彼らは以前とは違う輝きのある演奏で、
デビュー曲を披露し、客の心を掴んだ。
更にはデビュー曲とは違うテイストの
新曲を披露した事で、
再び彼らの時間が動き出した。

そう、やっと人々に届いたのだ。
彼らのデビュー曲以外の曲が。
届けたいという想いが。

その後、ずっと支えてくれた彼女に、
気持ちを伝えた彼。
Liar-Sの友達から、
彼の恋人として、今では彼を支えている彼女。

自分の大切なLiar-S。
それでも彼女がLiar-Sを好きだという事が、
なんとなくスッキリしない程、
彼は彼女が愛おしくて堪らない。
メンバーにだって、
自分の大切なLiar-Sにだって、
彼女だけは渡せないと。

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俺の心はいつだってあんたでいっぱいなんだ。

だからあんたも、
もっとその心を俺でいっぱいにして、
俺の事だけ見ててくれ。 

これからさきもずっと。